著者
濱田 維子 小林 益江 佐藤 珠美 江島 仁子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.10-16, 2006-12-22

ピアエデュケーションの特徴は、同世代の仲間意識の共感・支持による教育効果が高い点と、知識提供だけではなく個人の自信や自己評価を高めることを目標としている点にある。本学では、2004 年度より、大学生ピアエデュケーターの養成とともに、大学生による小学生への性教育活動を展開している。小学5 年次から6 年次にかけた2 年間の継続的な授業展開を通して、子どもたちへの質問紙や感想をもとに授業評価を行い、小学生へのピアアプローチの効果について明らかにした。その結果、(1)小学生と年齢差のある大学生とのコミュニケーションを重視した活動展開によって、両者の関係性を構築することができた。(2)複数の大学生が体験談を語るという共感的アプローチによって、授業内容の理解が促進された。(3)自己肯定感の向上を目的とした授業展開により「自分を好きだ」といえる子どもが増加した。以上のことより、小学生とのコミュニケーションを重視したプログラムと、年齢差のある対象者に対しても、関係性を重視したピアアプローチによる効果的な性教育が可能であることが示された。
著者
佐藤 珠美 エレーラ C. ルルデス R. 中河 亜希 榊原 愛 大橋 一友
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-70, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

目 的産後女性の手や手首の痛みの有症率,痛みの出現時期,痛みの部位と手や手首の痛みの関連要因を明らかにする。対象と方法産後1年未満の女性876名に無記名自記式質問紙調査を行った。分析対象は産後1か月から8か月の有効回答514部(58.7%)である。調査内容は手や手首の自発痛の有無とその部位,痛みが発症した時期とその後の経過,痛みに影響を与える要因,属性とした。結 果35.2%の女性が産後に手や手首の痛みを保有していた。痛みの出現時期は妊娠期から産後7か月までと長期にわたっているが,産後1か月から2か月に出現した人が多かった。痛みの訴えは両側性が多く,左右の割合の差は少なかった。疼痛部位は橈骨茎状突起,橈骨手根関節,尺骨茎状突起,母指中手指節関節,母指手根中手関節の順に多くみられた。年齢,初産婦,手と手首の痛みの既往が痛みに関連しており,有意差を認めた。一方,母乳育児,産後の月経の再開,モバイル機器の使用時間との関連はなかった。結 論産後女性の3人に1人は手や手首の痛みを経験し,痛みの多くは産後1か月から2か月に出現していた。年齢が高く,初産婦で,手や手首の痛みの既往がある産後の女性では,手や手首の痛みに注意する必要がある。
著者
竹ノ上 ケイ子 佐藤 珠美 辻 恵子
出版者
日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.8-21, 2006-10-02
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

目 的 自然流産後夫婦の関係変化とその要因を明らかにし,夫婦を対象としたケアの方向性,援助方法を考案する基礎資料とする。方 法 自然流産後3か月から2年経過し,掲示やホームページによる公募に応じた夫婦を対象とし,後方視による関係変化についての記述内容をデータとして,質的,帰納的に内容分析を行った。結 果 166名(男性14名,女性152名)が,流産後の夫婦関係の変化内容を記述し,その内容177件をデータとした。夫婦関係の変化内容として【個の成長・成熟と夫婦関係のよい循環過程】,【親密な良い関係のさらなる向上】,【関係の深化と発展】という3つのポジティブな変化と【希薄な悪い関係のさらなる悪化】,【関係の断絶と破綻】という2つのネガティブな変化が得られた。 ネガティブ変化にかかわる要因として【事実誤認と相互理解の困難】,【配偶者を負の方向で評価】,【悲哀のプロセスの共有困難】,【普段の夫婦関係が希薄】,【子どもを持つことについての感情や思考のすれ違い】,【性生活の困難】,【夫婦としての存在意味喪失】の7つが得られた。 ポジティブ変化にかかわる要因として【適切な事実認識】,【配偶者の肯定的評価】,【自己開示と自己確認】,【悲哀のプロセス共有】,【関係向上への努力】,【親としての自覚と努力】の6つが得られた。結 論 流産は衝撃的な対象(胎児)喪失体験であり,危機的状況を引き起こす重大なストレス因子であること,夫婦関係創成期,家族創成期に困難を連続して体験すること,親になる意思確認や夫婦,あるいは家族であることの確認の機会であること,正しい事実認識や悲哀のプロセス共有が危機的状況を乗り越える鍵となり,個と夫婦の発達を促す契機にもなり得るが,反対に感情や思考のすれ違いが生じやすく,関係の断絶と破綻も生じやすいことが示唆された。PurposeThe aim of this study was to explore the ways miscarriage can alter a couple's marital relationship and its related factors.MethodA qualitative, contextual analysis was conducted of 166 subjects--women who had miscarried from three months to two years earlier and their spouses. They were recruited by notices on bulletin board at women's centers, through an Internet Web Site, and through acquaintances. An open-ended question, "How did the miscarriage alter/ affect your relationship?" was asked on questionnaires. 14 males and 152 females responded, describing changes in their relationship after miscarriage. The descriptions were coded into 177 data, which were grouped and analyzed using inductive and contextual methods.ResultsThe contents were compiled into five categories: two negative changes-a worsening of a shallow relation and the aggravation and breakdown of the relation; and three positive changes-better cycle of the development and maturing of each person as an individual and as a couple; a deepening and evolving of each couple's relation; and aimprovement of intimate relations. Eight factors were involved in the negative changes: a) mutual misunderstanding of the difficulties encountered; b) a negative judgment of one's spouse; c) an inability to share the mourning process; d) a continued shallow marital relationship; e) a decrease in communication; f) a lack of agreement on the desirability of having a child; g) sexual difficulties; and h) a general doubting of the value of remaining as a couple. Seven factors were involved in the positive changes: a) strengthening of the couple's bond by sharing the difficulty;b) a recognition of the miscarriage and his/her spouse's reaction; c) a positive evaluation of his/her spouse; d) an open-mindedness to the partner and reconfirmation of his/her own feelings toward the partner; e) a sharing of the mourning process; f) an affirmation of and commitment to improve the marital relationship; and g) a selfawareness and striving for being a parent.ConclusionThese results reconfirmed that a miscarriage is a major stress factor which can cause a crisis in a marital relationship. They also suggest that the ways that women and men face the miscarriage and faced themselves and whether they share the mourning process relates to the development of the relationship. The data also suggeststhat a miscarriage lets the couple confirm whether they want to have a child or not. Finally, the data suggests that a miscarriage, if encountered positively, can help the couple grow from growth into an existential humanistic relationship.
著者
竹ノ上 ケイ子 佐藤 珠美 辻 恵子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

自然流産した日本人女性とその配偶者の喪失,悲嘆の実態を把握し,実状に合った援助システムを考案することを研究目的とした。平成14年度は,面接調査に着手し,流産前後のカップルの状況や受けた援助の実際,課題等を把握した。援助の試みとして,インターネットのホームページ:http//web.sfc.keio.ac.jp/〜takenoue/「流産を経験された女性&男性のためのページ」を作成し情報提供とインターネットやメールを介した援助を開始した。平成15年度は,神奈川県かながわ女性センターにおいて面接による聞き取り調査と相談活動を開始し,その指導の際に使用するリーフレットを作成した。また,インターネットのホームページに見る流産後女性たちの喪失,悲嘆の実態と癒しについての調査を行い,流産・早産に関するインターネットのホームページ数が増加傾向にあり,インターネットを介した援助の可能性があることが明らかになった。平成16年度は,流産体験者の会(ポコズママの会)の創設とその活動の支援を行った。この体験者の会のサポートを受けてインターネットのホームページ経由でアンケート調査を行った。その結果,病院・産院での援助・配慮が不十分であること,万人に合う援助はあり得ないので援助の個別化が必要であること,流産体験者同士の情報交換や支え合いが有効であること,インターネットのホームページを介した援助による効果が得られる可能性があることなどが明らかになった。これらの研究成果は国内外の学会で発表した。今後は本研究で得られた知見を医療現場へ還元するとともに,医療者と患者(体験者)が協力して,医療施設以外でも自然流産後の女性と配偶者らの意志を尊重し,彼らの持てる力を発揮してもらい,地域社会を巻き込みながら現実のビーズに合った援助システムを創りあげていく必要があると考えており,研究を継続する予定である。
著者
竹ノ上 ケイ子 佐藤 珠美 辻 恵子
出版者
日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 = Journal of Japan Academy of Midwifery (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.8-21, 2006-10-02 (Released:2013-08-09)
被引用文献数
1

目 的 自然流産後夫婦の関係変化とその要因を明らかにし,夫婦を対象としたケアの方向性,援助方法を考案する基礎資料とする。方 法 自然流産後3か月から2年経過し,掲示やホームページによる公募に応じた夫婦を対象とし,後方視による関係変化についての記述内容をデータとして,質的,帰納的に内容分析を行った。結 果 166名(男性14名,女性152名)が,流産後の夫婦関係の変化内容を記述し,その内容177件をデータとした。夫婦関係の変化内容として【個の成長・成熟と夫婦関係のよい循環過程】,【親密な良い関係のさらなる向上】,【関係の深化と発展】という3つのポジティブな変化と【希薄な悪い関係のさらなる悪化】,【関係の断絶と破綻】という2つのネガティブな変化が得られた。 ネガティブ変化にかかわる要因として【事実誤認と相互理解の困難】,【配偶者を負の方向で評価】,【悲哀のプロセスの共有困難】,【普段の夫婦関係が希薄】,【子どもを持つことについての感情や思考のすれ違い】,【性生活の困難】,【夫婦としての存在意味喪失】の7つが得られた。 ポジティブ変化にかかわる要因として【適切な事実認識】,【配偶者の肯定的評価】,【自己開示と自己確認】,【悲哀のプロセス共有】,【関係向上への努力】,【親としての自覚と努力】の6つが得られた。結 論 流産は衝撃的な対象(胎児)喪失体験であり,危機的状況を引き起こす重大なストレス因子であること,夫婦関係創成期,家族創成期に困難を連続して体験すること,親になる意思確認や夫婦,あるいは家族であることの確認の機会であること,正しい事実認識や悲哀のプロセス共有が危機的状況を乗り越える鍵となり,個と夫婦の発達を促す契機にもなり得るが,反対に感情や思考のすれ違いが生じやすく,関係の断絶と破綻も生じやすいことが示唆された。 PurposeThe aim of this study was to explore the ways miscarriage can alter a couple's marital relationship and its related factors.MethodA qualitative, contextual analysis was conducted of 166 subjects--women who had miscarried from three months to two years earlier and their spouses. They were recruited by notices on bulletin board at women's centers, through an Internet Web Site, and through acquaintances. An open-ended question, “How did the miscarriage alter/ affect your relationship?” was asked on questionnaires. 14 males and 152 females responded, describing changes in their relationship after miscarriage. The descriptions were coded into 177 data, which were grouped and analyzed using inductive and contextual methods.ResultsThe contents were compiled into five categories: two negative changes-a worsening of a shallow relation and the aggravation and breakdown of the relation; and three positive changes-better cycle of the development and maturing of each person as an individual and as a couple; a deepening and evolving of each couple’s relation; and aimprovement of intimate relations. Eight factors were involved in the negative changes: a) mutual misunderstanding of the difficulties encountered; b) a negative judgment of one’s spouse; c) an inability to share the mourning process; d) a continued shallow marital relationship; e) a decrease in communication; f) a lack of agreement on the desirability of having a child; g) sexual difficulties; and h) a general doubting of the value of remaining as a couple. Seven factors were involved in the positive changes: a) strengthening of the couple's bond by sharing the difficulty;b) a recognition of the miscarriage and his/her spouse's reaction; c) a positive evaluation of his/her spouse; d) an open-mindedness to the partner and reconfirmation of his/her own feelings toward the partner; e) a sharing of the mourning process; f) an affirmation of and commitment to improve the marital relationship; and g) a selfawareness and striving for being a parent.ConclusionThese results reconfirmed that a miscarriage is a major stress factor which can cause a crisis in a marital relationship. They also suggest that the ways that women and men face the miscarriage and faced themselves and whether they share the mourning process relates to the development of the relationship. The data also suggeststhat a miscarriage lets the couple confirm whether they want to have a child or not. Finally, the data suggests that a miscarriage, if encountered positively, can help the couple grow from growth into an existential humanistic relationship.
著者
松尾 和枝 喜多 悦子 酒井 康江 佐藤 珠美 小林 益江
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

昨年の調査で得られた『雪の季節の出産が大変である』この住民の声を踏まえて、雪の季節の出産を避ける。また出産時、救急車で運ばれなければならない状況を早期に発見し、対処方法を検討する。この2つの目的のために、「予防と早期発見」が必要であることを住民達自身が気づくように、健康学習会と意見交換会を行った。女性集団、男性集団をそれぞれに集めて、日本から持参したマギーエプロンを用いて、出血や分娩の経過に異状をもたらす妊娠中の母体の状態を視覚的に示した。その体内で起きている異常を視覚的に理解すると、住民達は、早期発見の必要性と検診の必要性を理解することができた。現地ナース、助産師が健診受診による早期発見対処の可能性について補足説明をした。助産師は、パクリット村の方言を加えたペルペル語でアズロのマタニティ病院での制度、システム、経費について説明を加えた。最初は、雪の季節を避けた計画妊娠について、神のみが知ることと、全く聞く耳を持たなかった年配の女性達も、助産師の説明で理解をした。また、男性たちも雪の季節に妻や子を救急車で搬送をすることの負担や、その結果、娘を失った辛く悲しい経験を共有し、今回の健康教育内容を家族や地域に広めていくことを約束した。今回の健康学習会は、バクリット村住民の約20数名に伝えたに過ぎない。村の住民に妊娠出産についての正しい情報提供と、その正しい知識に基づく適切な保健行動の形成については、今後も継続的な啓蒙普及活動が必要であると考える。今後は、B村のナースとデレゲションの助産師と継続的な連携を持ちながら、活動の定着、妊婦・乳幼児死亡ゼロの村を目指した住民の意識・行動の変容やスタッフの活動の評価も行って行きたい。今回の調査活動並びに健康学習会の一連の過程を、現地看護職に紹介し事例検討を行なった。彼らは、病院で患者を待っていたことを反省し、医療職が現地に出向いて地域の問題に気づき、住民と共に健康問題の改善に努力するアウトリーチの活動の必要性に気付いた。