著者
渡邊 嘉章 北島 翼 西口 奈菜子 渡邊 聖子 里 龍晴 伊達木 澄人 井手口 怜子 森内 浩幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.136-140, 2017 (Released:2017-04-22)
参考文献数
18

Arterial spin labeling (ASL) 法は造影剤を使用せず脳血流をみることのできるMRIの撮影方法であり, 近年海外では片頭痛発作時のASLに関する報告が散見される. 今回acute confusional migraine (ACM) の小児2例を経験した. 錯乱状態出現時にASLを撮影し, 1例は両側後頭葉から頭頂葉, 側頭葉にかけての血流低下を認め, もう1例は左大脳半球の血流低下を認めた. T1強調画像, T2強調画像, 拡散強調画像, fluid attenuation inversion recovery (FLAIR) 画像は正常であった. 後日再検したASLでは2例ともに血流低下は改善していた. 後頭葉だけでなく, 大脳半球に広範囲の血流低下を来すことがACMの特徴と考えられた. ASLは, single photon emission CT (SPECT) による被ばくや造影MRIによる造影剤の使用といったリスクを伴わず繰り返し検査が可能であり, 鑑別に苦慮するACMでは診断の一助となる可能性がある.
著者
松尾 光弘 藤井 明子 松坂 哲應 馬場 啓至 戸田 啓介 小野 智憲 田中 茂樹 里 龍晴 森内 浩幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.272-278, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
24

【目的】難治性てんかんに対するlevetiracetam (LEV) 長期効果の判定. 【方法】観察期間は18カ月以上2年以内とした. LEVを追加投与した76症例に対し, 50%以上発作が減少した症例の割合 (以下50%RR) と有害事象を後方視的に検討した. 【結果】全症例の50%RRは42%であった. 局在関連てんかん54例と全般てんかん20例の50%RRは, 各々42%, 35%で, 著効例は局在関連てんかんに多かった. 有害事象として, 焦燥感, 多動・衝動性の亢進が目立ち, それらは自閉症または, 注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) 傾向を合併した例に多かった. LEV追加投与前にγ-GTPが高値であった17例で追加時1剤以上を減量することで, 14例でγ-GTPの改善が認められた. 【結論】LEVは, 難治性てんかんの治療に有用であり, 長期にわたる効果が確認された. また, 肝臓への負担増悪因子となる可能性は低い. 一方, 自閉症またはAD/HD傾向を合併した患者へ投与の際には, 精神・行動面での変化を注意深く観察することが必要である.