著者
久保 亨 森内 浩幸 西村 秀一 森田 公一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

肺炎は現在本邦での死因の第3位であり増加傾向にある。肺炎の治療において起因病原体の迅速な確定診断と薬剤耐性の有無の検索は非常に重要である。我々は、簡便で迅速な遺伝子増幅検査法であるリアルタイムPCR法を用いた結核およびその他の肺炎の簡易迅速確定診断・薬剤耐性判定システムの構築を行い、実臨床における有用性を示し、その地域医療への応用を行っている。この系を用いれば、より迅速に低コストで肺炎の鑑別診断と薬剤耐性の有無の推定が可能となり、地域の高齢化・医療過疎化の中でのより効率的な結核・呼吸器疾患コントロール対策モデル作りに繋がると考えられる。
著者
森内 浩幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.151-156, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
12
被引用文献数
4

近年における先天性サイトメガロウイルス (CMV) 感染症の診療における最大の進歩は, 症候性感染児に対する抗ウイルス療法が予後を改善できることを示したことである. それに伴って, 感染児を見逃すことなく確定診断することの重要性が増し, 本邦では生後21日以内の新生児尿を検体としたCMV核酸増幅法が保険収載された. しかし今なお多くの先天性CMV感染児が診断されないまま見逃されており, 特に新生児聴覚スクリーニングを経て発見された先天性難聴児の中に潜む先天性CMV感染児の早期診断と治療介入が進むことが望まれる.
著者
森内 浩幸
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

(1)CCR5の発現が朝低く夜に高くなる概日リズムを示すことを、リアルタイムRT-PCRを用いてmRNAのレベルで、そして定量的フローサイトメトリーを用いて細胞表面発現のレベルで示した。この機序として、概日リズムの影響を受ける転写因子であるDBPが関与する可能性を、(1)DBPが末梢血リンパ球においても発現し、細胞核抽出液を用いたゲル・シフト実験で朝に低く夜に高い発現パターンを示すこと、(2)CCR5プモーター領城にDBPが結合することをゲル・シフト実験で示したこと、(3)DBPがCCR5プロモーターの活性を亢進させることをトランスフェクション実験によって示したこと、そして(4)CCR5プロモーター上のDBP結合部位の変異導入によってこのような活性化作用が消失することによって示した。(2)EBウイルスの急性感染(伝染性単核症)に際してリンパ球が活性化されしかもTh1に強くシフトされることから、Th1のマーカーともされるCCR5の発現とこれを用いて細胞に侵入するR5-HIV-1の感染効率を調べたところ、(1)伝染性単核症急性期においでCCR5の発現が高まり回復期にはコントロールのレベルに戻ること、そして(2)急性期と回復期にそれぞれ採取保存していたリンパ球を用いてR5-HIV-1の感染実験を行ったところ、急性期のリンパ球は特に細胞に刺激をさらに加えることなくとも感染を効果的にサポートすることを明らかにした。(3)漢方薬としても用いられる紫根の主成分シコニンがCCR5の発現をプロモーターのレベルで抑制することを示した。(4)胎児・新生児および妊婦の血清に大量に含まれるα-フェトプロテインがCCR5の発現を抑制することを示した。
著者
渡邊 嘉章 北島 翼 西口 奈菜子 渡邊 聖子 里 龍晴 伊達木 澄人 井手口 怜子 森内 浩幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.136-140, 2017 (Released:2017-04-22)
参考文献数
18

Arterial spin labeling (ASL) 法は造影剤を使用せず脳血流をみることのできるMRIの撮影方法であり, 近年海外では片頭痛発作時のASLに関する報告が散見される. 今回acute confusional migraine (ACM) の小児2例を経験した. 錯乱状態出現時にASLを撮影し, 1例は両側後頭葉から頭頂葉, 側頭葉にかけての血流低下を認め, もう1例は左大脳半球の血流低下を認めた. T1強調画像, T2強調画像, 拡散強調画像, fluid attenuation inversion recovery (FLAIR) 画像は正常であった. 後日再検したASLでは2例ともに血流低下は改善していた. 後頭葉だけでなく, 大脳半球に広範囲の血流低下を来すことがACMの特徴と考えられた. ASLは, single photon emission CT (SPECT) による被ばくや造影MRIによる造影剤の使用といったリスクを伴わず繰り返し検査が可能であり, 鑑別に苦慮するACMでは診断の一助となる可能性がある.
著者
森内 浩幸
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.633-638, 2016 (Released:2019-02-13)
参考文献数
11

感染症は小児の難聴の原因として古くから重要で、先天性感染では先天性風疹症候群や先天梅毒が有名であり、後天性感染では髄膜炎、脳炎、中耳炎をはじめ、麻疹や猩紅熱のようなありきたりの感染症も難聴を起こしていた。幸い、ワクチン(風疹、麻疹、日本脳炎、肺炎球菌、Hibなど)や抗生剤(ペニシリンなど)の開発と普及によって、先進国では多くの感染症が稀な疾患となり、その後遺症として難聴をきたす子ども達の数も少なくなった。しかし世界に目を向けると、まだ風疹ワクチンが普及していないため先天性風疹症候群の被害(その中でも最多の障害は難聴)を受けている子ども達が少なくないし、その他の感染症も制御されているとはとても言えない状況が続いている。そしてわが国においても今なお対策が不十分な感染症、そしてそのために生じる難聴の問題が残されている。先天性感染ではサイトメガロウイルス、後天性感染ではムンプスである。
著者
森内 浩幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

牛白血病ウイルス(BLV)はヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の近縁のウイルスであり、多くのウシが感染していることから、ヒトへの感染の有無が心配される。(1)BLVのプロウイルスDNA(pDNA)の検出末梢血単核細胞(PBMC)からのBLV pDNAの検出を、PCR+Southern blotting(SB)またはreal-time PCRを用いて行った。一部の検体からごく僅かのBLV pDNAが検出されたが、確認実験の成績は不安定であった。閾値ギリギリの微量であることが予想し、検出感度を高めるためにウイルス感染細胞と推測されるB細胞をEBウイルス感染によって不死化させ増殖させた上でDNAを抽出し検索したところ、一名の健常人検体ではSB法でtax・env遺伝子で陽性、pol遺伝子もPCR法で陽性となった。この健常人検体より増幅されたBLV env遺伝子の配列を解析し、既知のBLV遺伝子配列と共に系統樹解析を行ったところ検体中のenv遺伝子は米国や豪州のBLVと近縁で、本邦の牛のBLVと同一グループに属した。しかし、pDNAの全域の増幅と塩基配列の決定を試みたが、増幅困難な箇所が多々みられ未だ確認に至っていない。(2)抗BLV抗体の検出BLV持続感染細胞の細胞抽出液や培養上澄液に存在するBLV蛋白や、GSTとの融合蛋白としてBLVのEnvやTaxなどのウイルス蛋白を実験室内で精製した。これらを抗原として研究対象者の血清中の抗BLV抗体の有無をWB法で調べたところ、健常人で陽性1/11(9%)・保留1/11(9%)、乳癌患者で陽性1/32(3%)・保留3/32(9%)であったが、BLV pDNA検出結果との一致は明らかではなかった。【考察】過去の報告に比し人におけるBLV抗体保有率は低く、また現段階ではこれが真の感染を示唆するものかどうかの確証は得られなかった。一検体において複数のウイルス遺伝子配列が検出されたが、検出範囲は短くpDNAが全域存在する確証は得られていない。以上の結果からBLVの人への感染はあっても比較的稀であることが推察された。

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著者
森内 浩幸
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.27, 2023 (Released:2023-07-21)
参考文献数
22

【要旨】子どもは当初 SARS-CoV-2 に感染することが少なかったが、オミクロン株に置き換わってから感染例が激増した。ただ子どもは大人(特に高齢者)にくらべて重症化することがきわめて少なく、その機序としては自然免疫応答の強さや抗感冒コロナウイルス免疫の交差反応が想定されている。重症化率は低くても感染例が激増したことを受けて重症例・死亡例がみられるようになり、特に国内では急性脳症の併発が危惧されている。またコロナ禍における社会の変化や子どもの感染予防対策が過度に行われることにより、子どもの心の発達を妨げられ心の健康を蝕まれていることに留意すべきである。
著者
森内 浩幸
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-7, 2022 (Released:2022-07-31)
参考文献数
12

新型コロナウイルスは罹れば誰もが重症化するウイルスではなく,健康な子どもにとっては基本的に風邪のウイルスである。逆に,感冒コロナウイルスも,高齢者や基礎疾患のある人が罹ると重症化することがあり,重症化はウイルスそのものの性質というよりは宿主側の免疫応答の違いがもたらすものと言える。子どもにとっては,RSウイルスやインフルエンザウイルスの方が遥かに危険なウイルスである。また子どもの新型コロナウイルス感染の多くは大人からもたらされているものであり,子どもの感染は社会における流行の最終ステージと言える。子どもでも重症化のリスクとなる基礎疾患を持っている場合は注意が必要であり,周囲の大人と本人へのワクチン接種が望まれるが,健康な子どもへのワクチン接種はベネフィットとリスクのバランスを十分に検討すべきだ。
著者
松尾 光弘 藤井 明子 松坂 哲應 馬場 啓至 戸田 啓介 小野 智憲 田中 茂樹 里 龍晴 森内 浩幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.272-278, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
24

【目的】難治性てんかんに対するlevetiracetam (LEV) 長期効果の判定. 【方法】観察期間は18カ月以上2年以内とした. LEVを追加投与した76症例に対し, 50%以上発作が減少した症例の割合 (以下50%RR) と有害事象を後方視的に検討した. 【結果】全症例の50%RRは42%であった. 局在関連てんかん54例と全般てんかん20例の50%RRは, 各々42%, 35%で, 著効例は局在関連てんかんに多かった. 有害事象として, 焦燥感, 多動・衝動性の亢進が目立ち, それらは自閉症または, 注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) 傾向を合併した例に多かった. LEV追加投与前にγ-GTPが高値であった17例で追加時1剤以上を減量することで, 14例でγ-GTPの改善が認められた. 【結論】LEVは, 難治性てんかんの治療に有用であり, 長期にわたる効果が確認された. また, 肝臓への負担増悪因子となる可能性は低い. 一方, 自閉症またはAD/HD傾向を合併した患者へ投与の際には, 精神・行動面での変化を注意深く観察することが必要である.
著者
森内 浩幸 有吉 紅也 大沢 一貴
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ベトナム中南部で2222組の母子を対象とする出生コホートで、種々の母子感染の研究を行った。先天性サイトメガロウイルス感染を0. 54%、(非流行時に)先天性風疹感染を0. 13%に認めた。母体のB型肝炎キャリア率は12. 5%、既感染も加えると58. 8%の高率であった。2歳児の調査ではB型肝炎キャリア率は1. 9%に認めた。2011年初頭の風疹流行に続いて先天性風疹症候群の発生が増えており、これまでに36名の患児の疫学・臨床的解析を行った。