著者
石川 創 重宗 弘久
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-28, 2008-03

(財)日本鯨類研究所は,国際捕鯨取締条約第8条に基づき日本政府が発給した特別許可による鯨類捕獲調査を,南極海(JARPA)および北西太平洋(JARPN)で行っている.鯨類捕獲調査では,致死的調査における動物福祉を向上させるため,詳細なデータ収集と解析に基づく鯨の致死時間(TTD)短縮および即死率(IDR)向上の努力が払われている。漁具改良による致死時間短縮を目指し,2000年から2004年にかけて鯨の捕獲に用いる爆発銛に搭載する銛先(グレネード)の改良実験を行った。ノルウェーが1999年に開発した新型グレネードおよび,日本の旧型グレネードの信管を改良した改良型グレネードを,旧型グレネードとともに比較実験した。ノルウェーグレネードおよび改良型グレネードは旧型と比較してTTDおよびIDRを有意に改善した。人工標的射撃実験及び洋上での検死結果から,その理由は両者ともに銛命中から爆発までの距離が短縮されたこと,および不発率が減少したことにより,グレネードの鯨体内での爆発率が大幅に向上したためと考えられた。ノルウェーグレネードと国産改良型グレネードを比較した場合,前者は小型個体の即死率が高い一方,後者は致死時間が短く不発率が低いなど,両者は捕殺手段として優劣つけがたかったが,コストと安定供給の側面からは将来の捕鯨漁具として国産改良型グレネードが推奨された。