著者
重本 修伺 坂東 永一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.379-389, 1996-04-01
被引用文献数
24 3

ブラキシズムは顎機能障害との関連で特に強い関心がもたれており,筋電図等を利用した多くの研究がある.しかし,肝心の咬合接触については適当な方法がなかったこともありほとんどが解明がすすんでいない.本研究では夜間睡眠時にどの歯のどの部位でブラキシズムを行っており,その時関節窩と顆頭の関係はどのようになっているかを調べることのできる顎運動測定器の開発を目指したものである.郡らが報告している磁気位相空間方式顎運動測定器を基にこれを発展,改良したところ,この目的に適う測定器を開発することができた.今後,本測定器の応用によりブラキシズムに関する多くの知見が得られると期待できる.
著者
鈴木 善貴 大倉 一夫 重本 修伺
出版者
Japanese Society of Stomatognathic Function
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.113-124, 2010
被引用文献数
1

睡眠時ブラキシズムの治療には,一般的にオクルーザルスプリントが用いられているが,その作用機序はもちろん,付与すべき咬合挙上量の明確な指標すら未だ不明である.この理由のひとつとして,夜間睡眠中の顎運動を観察,測定することが非常に困難であることが挙げられる.本研究では著者の所属分野で開発した睡眠時6自由度顎運動測定システム(口腔内センサ方式6自由度顎運動測定器-携帯型ポリソムノグラフ-AVモニタ)を用いて,睡眠中の顎運動測定を行い,仰臥位での睡眠中の咀嚼筋安静(低緊張)状態の切歯点における垂直的顎位について解析するとともに,睡眠時ブラキシズムの発現頻度との関係についても検討を行った.被験者は睡眠障害がなく,顎口腔系に異常のない個性正常咬合を有する成人12名(男性7名,女性5名,平均年齢25.5±5.7歳)を対象とし,二夜連続測定を行って,第二夜目のデータを解析対象とした.全被験者とも良好な睡眠状態であり,本測定システムによる睡眠への影響は最小限であった.平均垂直的顎位は2.9~ 6.0 mmであった.垂直的顎位は,睡眠段階の違いによる差はなかったが,Stage 1では2.5~5.0 mmのEpochが有意に多く(<i>P</i><0.05),Stage REM,2,3&4では2.5~5.0 mm,5.0 mm以上のEpochが1.0 mm未満,1.0~2.5 mmのEpochよりも有意に多く認められた(<i>P</i><0.05).垂直的顎位が2.5 mm以上を示すEpochは84.2±16.3%であった.また睡眠時ブラキシズムと平均垂直的顎位の間には負の相関が認められた(R<sup>2</sup>=0.705,<i>P</i><0.05).本研究結果よりヒトは終夜垂直的に開口状態にあり,垂直的顎位は,オクルーザルスプリントに付与すべき咬合挙上量の指標になることが示された.