著者
MA Bruce Yong 川嵜 敏祐 野中 元裕
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

樹状細胞C型レクチンDC-SIGNの新規リガンドに関する研究これまで我々は、DC-SIGNが結腸がん細胞株SW1116を認識すること、認識にはSW1116細胞上の糖タンパク質であるcarcinoembryonic antigen(CEA)が関与していることを既に明らかにしている(Nonaka M, et al., J.Immunol.2008, 180 : 3347-3356.)。しかしながら、結腸がん細胞上の他のDC-SIGNリガンドに関する検討は行われていない。1. 樹状細胞C型レクチンDC-SIGNの新規リガンドの同定本研究は、MoDC(Monocyte-derived dendritic cells)と結腸がん細胞株COLO205を共培養すると細胞同士の接着が起こること、この細胞間相互作用にはDC-SIGNが関与することを明らかにした。次に質量分析法により、DC-SIGNのリガンド糖タンパク質としてMac-2 binding protein(Mac-2BP)を新たに同定した。またMac-2BPには結腸がん関連ルイス式糖鎖抗原が発現していること、特にルイス糖鎖のa1-3,4-フコースがDC-SIGNとの結合に重要であることを、種々のグリコシダーゼを用いた実験により明らかにした。2. DC-SIGNの新規リガンドを介するがん細胞の免疫監視からの逃避に関わる糖鎖シグナルの解析本研究は、MoDCとCOLO205細胞の共培養条件において、MoDCの成熟マーカーであるCD83、CD86の発現が抑制されることを明らかにした。このことは、DC-SIGNを介した結腸がん細胞の認識が、がん細胞による免疫機構からの逃避を助けることを示唆するものである。本研究は、免疫系における糖鎖の重要性を示すだけでなく、がん細胞の免疫逃避メカニズムの新たなモデルを提唱するものであり、DC-SIGNを介する細胞内シグナル経路を標的とした新しい薬の開発に繋がると考えている。