著者
野中 理絵 野中 一誠 西 亮介 吉田 亮太 松島 知生 西 恒亮
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】頸椎症は40歳以上の男性の下位頸椎に好発すると言われており,若年における症例報告は散見しない。今回,頸椎症と診断された20代女性の理学療法を担当する機会を得た。アライメントに着眼して介入し,良好な結果が得られたので,以下に報告する。【症例提示】症例は20代女性,診断名は頸椎症。現病歴は起床時に頸部痛出現,鎮痛剤にて症状消失。約2か月後に同様の症状出現,鎮痛剤でも症状変わらず,それから1か月後に理学療法開始。主訴は頸を曲げると左頸部後方が痛くなる。X-p所見では,C3/4・4/5・5/6椎間腔狭小化を認めた。座位アライメントでは頭部・上位頸椎伸展位,下位頸椎前彎が消失し,頭部・C2-3右回旋位,C4-7左回旋位を認めた。頭頸部前屈時に左頸部後方に疼痛を認めた。前屈動作として下位頸椎の動きはほとんど見られず,上位頸椎の左回旋・側屈を伴い,前屈最終域で頭部左回旋位となった。頭部を正中位へ修正することで自動運動時の疼痛消失。頭頸部筋群に過緊張・圧痛,左頭半棘筋・板状筋に硬結が認められた。神経学的所見は認められなかった。【経過と考察】本症例では頭部・頸椎マルアライメントの状態で,上位頸椎の左回旋・側屈を伴う前屈運動を行っていた。そのため頸椎症に伴う二次的な筋スパズムが左頸部筋に生じ,これが疼痛の原因であったと考える。そこで頭頸部筋群のストレッチングやマッサージに加えて,頭部正中位での頭頸部自動運動を中心に行った。その結果,介入後2ヶ月で疼痛消失,座位では頭部マルアライメントが改善し,上位頸椎の左回旋・側屈を伴わずに前屈が可能となった。頸椎症に対する理学療法の概要として,後部頸部筋群・肩甲帯周囲筋群のリラクセーションを目的としたストレッチング・温熱療法,良姿勢指導・禁忌肢位指導が報告されている。本症例により,若年で発症した頸椎症に対しても,姿勢指導や運動療法が有効であるということが示唆された。
著者
西 亮介 原 耕介 野中 理絵 小保方 祐貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1307, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】投球障害に与える因子として肩関節可動域低下や原テストの低値等の上肢機能の影響のみならず,股関節可動域及び下肢柔軟性の低下等の下肢機能の影響が報告されている。しかし,上肢機能と比較し下肢機能と投球障害との関連性についての報告は少ない。また,上肢機能検査においては投球動作を考慮した検査項目があるのに対し,下肢機能検査では投球動作を考慮した検査項目は散見しない。そこで本研究では,投球動作を考慮した下肢機能検査(以下,投球下肢機能検査)を考案し,投球障害との関連性を上下肢機能検査とともに明らかにする事を目的とした。【方法】甲子園出場レベルの高校野球選手48名を対象とした。除外基準は投球側肩及び肘関節術後で主治医から全力投球の許可がないものとした。アンケートを実施し,当日投球時に痛みを訴える者を疼痛群,それ以外の者を非疼痛群とした。上肢機能検査として肩関節可動域(肩関節外転位内外旋・肩関節屈曲位内旋)・原テスト,下肢機能検査として股関節可動域(屈曲・伸展・内旋)・下肢柔軟性検査(SLR・HBD・トーマステスト),投球下肢機能検査として股関節可動域(股関節90度屈曲位内転)・下肢柔軟性(股関節90度屈曲位からの膝伸展角度・膝関節90度屈曲位股関節伸展角度)を測定した。股関節90度屈曲位内転及び膝関節90度屈曲位股関節伸展は各々非投球側・投球側における加速期,股関節90度屈曲位からの膝伸展は非投球側のボールリリースの動きを考慮した。統計処理にはSPSSver.17.0を用いて群間比較をMann-WhitneyのU検定・カイ二乗検定を用い,有意水準5%とした。【結果】アンケート結果から疼痛群29名,非疼痛群19名,疼痛部位は肩延べ17名・肘延べ21名,疼痛発生相で最も多い相は加速期で18名であった。尚,除外基準に当てはまる者はいなかった。投球側肩関節屈曲位内旋角度・CAT・HFT・投球側下垂位外旋筋力において疼痛群で有意に低値を示した(p<0.05)。その他項目に有意差は認めなかった。【結論】投球側肩関節屈曲位内旋角度・CAT・HFT・投球側下垂位外旋筋力で群間に有意差を認め,先行研究と同様の結果を示した。これらの項目は投球動作を再現する項目が含まれることから,投球障害に対する評価において投球動作を再現した検査項目は重要であると考えられる。しかし,投球下肢機能検査では有意差を認めなかった。瀬尾らは,加速期における非投球側股関節屈曲角度は100度,投球側膝関節屈曲角度は40度,ボールリリースにおける股関節屈曲角度は100度と報告しており,投球下肢機能検査における開始肢位の各関節角度と異なる角度であった。よって,本研究における投球下肢機能検査は,投球動作中の動きの再現が不十分であった可能性が考えられた。今後は,投球下肢機能検査の各関節の角度設定を変更し,検討する必要性がある。