著者
松本 敏治 橋本 洋輔 野内 友規
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.81-91, 2024-02-25 (Released:2024-02-25)
参考文献数
40

近年,ASDの方言不使用という印象が全国で見られるとする報告がなされており,解釈の一つとしてメディアからの言語習得を指摘する意見があるが,否定的見解も存在する。この解釈が妥当であるなら,自然言語とメディア言語に乖離がある国や地域では類似の現象が生じる可能性があり,アイスランド・北アフリカからはこの解釈を支持するような報告がある。本論文では,4名のアイスランドのASD青年・成人に関して,本人および母親に行った聞き取りの結果を報告する。4名とも初期はアイスランド語を話していたものの現在は英語が主要言語となっている。本人・親ともに,興味をもった英語メディア・コンテンツの繰り返し視聴によって英語習得が行われたと認識していた。これらの聞き取りとアイスランドにおけるアイスランド語と英語の使用状況の情報に基づいて,ASDのメディアからの言語習得の可能性とその成立条件を検討した。