著者
野原 博人 和田 一郎 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.293-309, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
17

本研究では, Engeström, Y.による「拡張的学習(Expansive Learning)」を理科授業デザインの視点として援用し, 主体的・対話的で深い学びを通した子どもの科学概念構築に関わる変化の様態について, 形成的アセスメントの要素とその関連性を視点として分析した。その内実と関連づけた上で, 主体的・対話的で深い学びの評価について, Sawyer, R.K.による「深い理解」を規準とした。科学概念の構築を図るための「道具」の変換過程をⅠ〜Ⅴと措定し, 小学校第4学年の水の温まり方についての授業デザインの分析を行った。分析した結果, 以下の諸点が明らかとなった。(1)「拡張的学習による理科授業デザイン」が具現されていくことで, 知識としての「道具」が主体的・対話的で深い学びによって構築されていった。(2)主体的・対話的で深い学びによって構築された知識としての「道具」は, Ⅰ〜Ⅴの段階を通して, 「深い理解」の具現化として, 質的変換が図られた。(3)「深い学び」と「学習における主体性・協働性」は表裏一体化して機能する。
著者
野原 博人 田代 晴子 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.443-455, 2019-03-25 (Released:2019-04-12)
参考文献数
16

本研究では,発達の最近接領域によって実現に向かう協働的な問題解決を念頭におき,科学概念構築を促す対話的な理科授業デザインについて検討した。対話を社会的相互作用の過程と捉え,その視点として,Alexander(2005)が示した「対話的な教授の原理」の指摘に着目した。また,対話的な教授の原理を促進する視点として,先行研究における形成的アセスメントに関する論考を援用し,「対話的な教授をアセスメントする視点」を措定した。分析の結果,以下の諸点が明らかとなった。(1)Alexanderの指摘する「対話的教授」に基づく授業デザインは,対話的な授業に有効に機能した。(2)評価する視点として措定した「対話的な教授をアセスメントする視点」は,「対話的な教授の5つの原理」を具現化することへ寄与した。これらの知見は,対話的な理科授業に基づく科学概念構築を促進する視点として援用できる可能があると考えられる。