著者
山野井 貴浩 佐藤 綾 古屋 康則
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.285-291, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
22

「種族維持」とは生物は種を維持する, あるいは仲間を増やすために繁殖するという概念であるが, 現代の進化生物学では否定されている概念である。しかしながら, 小中高の理科学習を終えた大学生であっても「種族維持」の認識を有している可能性がある。そこで本研究は, 種族維持の認識を問う質問紙を作成し, 5つの大学に通う大学生629名を対象に質問紙調査を行った。その結果, 半数以上の学生が種族維持の認識を有していること, 高等学校生物の履修や大学における進化の講義はその認識に影響していないことが示唆された。また, 高等学校生物や大学における進化の講義を履修した学生の方が, 血縁選択説や利他行動について知っていると回答した割合は高いという結果が得られた。誤概念を変容させるために, これらの用語を扱う高等学校生物や大学の進化の講義の授業方法を改善していく必要がある。
著者
白數 哲久 小川 哲男
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.37-49, 2013-07-17 (Released:2013-08-09)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では,小学生の科学的リテラシー育成のために「科学的探究」学習による科学的概念の構築を図るための理科授業のデザインを,ヴィゴツキーのZPD理論と,米国のFOSSによる水平的カリキュラム設計を基盤とし,ZPDにおける「科学的探究」の教授・学習モデルと教師の役割を可視化し,その有用性を小学校第3学年「じ石」の授業実践によって検証することを試みた。その結果,「自由な探索」→「体験的な学び」→「科学的概念との結びつけ」といった水平的な授業デザインの中で,教師が子どもの生活的概念を呼び起こし,適度な困難さのある発問をし,適切なタイミングを見計らって「教材」「言葉」「方法」を提示することで,生活的概念間の相互作用による再構成が起こるとともに,子どもが科学的概念への意識化を図りうることが示唆された。
著者
吉田 美穂 川崎 弘作
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.185-194, 2019-07-31 (Released:2019-08-29)
参考文献数
29
被引用文献数
1

小学校の理科授業の多くは「なぜ」という疑問を見いだす場面から学習が開始される。しかしながら,「なぜ」という抽象的な疑問のままではその後の探究活動につながりにくく,このような疑問を,探究の方向性を意味づけるより具体的な問いに変換する思考力が学習者には求められる。本研究では,このような疑問から問いへ変換する際の思考力の育成を目指すにあたって,疑問から問いへの変換過程における思考の順序性を明らかにするための調査および分析を行った。その結果,疑問から問いへ変換する際の思考の順序性(主として「問題状況の確認→既有知識の想起→要因の検討→仮説の形成→問いの設定」)が明らかになった。さらに,この過程を仮説を形成するまでの問題解決過程として整理すると,先行研究における問題解決過程「疑問の認識→問いの設定→仮説の形成」とは異なり,「疑問の認識→仮説の形成→問いの設定」と整理することができた。
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.279-292, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
47
被引用文献数
7

理科における問題解決や探究の入り口として, 学習者自身に仮説を立てさせることの重要性が指摘されている。一方, 仮説設定に関する先行研究においては, 学習者が仮説を設定する際の思考過程の実態が明らかにされてこなかった。そこで本研究では, 仮説設定を求める調査問題を6問作成するとともに, 大学生・大学院生を対象とした面接調査を実施した。結果の分析に際しては, まず, 発話プロトコルから思考過程を推定し, その内容によって6つのカテゴリーに分類した。次に, それらのカテゴリー間の推移を集計し, 仮説設定には共通した思考過程が存在することを明らかにした。また, 思考過程の合理性を得点化し, 思考過程との関係性を検討した結果, 変数の同定過程においては複数の変数の吟味が, 因果関係の認識過程においては因果関係の慎重な検討が合理性に正の影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
松森 靖夫 一瀬 絢子
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.271-277, 2015

本研究では, 計121人の小学校教員志望学生を対象に, 月の見かけの位置と観測時刻に関する認識調査を行った。具体的には, 計7種類の月の見かけの形(三日月, 上弦の月, 十二日月, 満月, 十八日月, 下弦の月, 及び二十六日月)を取り上げ, 夜間の肉眼観測によって見えはじめる位置と時刻, 及び見えなくなる位置と時刻について問うものであり, 質問紙法を用いて実施した。<BR>調査の結果, 科学的に認識できていた小学校教員志望学生は, 満月において約5%であり, 他の6種類の形においては皆無であった。また, 月の見かけの位置と観測時刻に対する小学校教員志望学生のプリコンセプションも認められた。
著者
中村 大輝 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.183-196, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
64

本研究は, 理科の問題解決における仮説設定に関する国内外の研究を収集・整理し, 国内外の差に留意しつつ, 研究の動向や課題を明らかにすることを目的とした。仮説設定に関する研究を, 「仮説の定義」「実態の評価」「思考過程」「指導」の4観点から整理し, 各観点における研究の動向や課題を検討した結果, 主に次の4点が明らかになった。1)仮説の定義の多様性は, 仮説の定義を構成する要素全体に見られるものではなく, 説明する対象の違いに由来するものであること。2)仮説設定の評価方法は, 国内外で用いられる方法に傾向差が存在すること。3)思考過程に関する研究では, 実際の理科授業における仮説を設定する際の思考過程を捉えられるよう改善を図る必要があること。4)国内における指導方法研究はその具体性で国外の研究に勝るものの, 各指導方法には課題も存在すること。
著者
佐々木 智謙 佐藤 寛之 塚原 健将 松森 靖夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.39-51, 2019-07-31 (Released:2019-08-29)
参考文献数
28

本研究の主目的は,腹面から描いた昆虫の体のつくりに対する小学校第2・3学年の認識状態を分析し,その結果に基づき,育成すべき子どもの資質・能力について検討を加えることにある。得られた知見は,以下の4点である。1)腹面から描いた計9種類の生き物を,昆虫とその他の生き物とに分類できた小2は約60%以上,小3は80%以上であったこと。2)腹面から描いた計6種類全ての昆虫の体を三つの部分(頭部・胸部・腹部)に正しく分けることができた小2は皆無であり,小3でも約20%であったこと。かつ,各昆虫の正答率は小2で10%未満,小3でも65%未満であったこと。3)昆虫の体のつくりに対する回答は多様であり,頭部で4類型,胸部で9類型,及び腹部で3類型が存在したこと。4)得られた結果をもとに,昆虫概念の育成を志向した学習指導方策について提案した。
著者
久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.397-408, 2016-03-19 (Released:2016-04-23)
参考文献数
59
被引用文献数
3

メタ認知は学力や動機づけ, 学習方略などと密接な関係にあるため, 我が国の理科教育学研究においてもメタ認知を対象とした研究が数多く見受けられるようになった。しかし, メタ認知の重要性は多くの研究者が認めるところであるが, メタ認知は高次な認知機能であると同時に抽象的な概念であることから研究の遂行が困難な側面も併せもっている。 そこで, 我が国の理科教育学研究におけるメタ認知研究の動向と課題を明らかにするため, 代表的な学術誌から文献を収集して分析を行った。その結果, 観察や実験活動を中心とした理科学習場面における児童生徒のメタ認知的モニタリングやメタ認知的コントロールといったメタ認知的活動を発問や教材教具の工夫によって直接的に促す授業設計や学習方略に関する研究が盛んに行なわれており, 実践的な知見が蓄積されていることが示された。しかし一方, 科学的思考や科学的探究といった科学的な問題解決能力を育成する際に必要なメタ認知的知識の種類やそれらを獲得させるための教授方略に関する研究といったメタ認知の知識的側面に着目した研究が少ないことが明らかになった。また, メタ認知を変数として扱った場合の測定方法に関しても課題が残されており, 今後の研究が待たれるところである。
著者
遠西 昭寿 福田 恒康 佐野 嘉昭
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.79-86, 2018-07-31 (Released:2018-08-22)
参考文献数
27
被引用文献数
4

「主体的な学習」においては, 行為や具体的操作よりも心的・認知的な意味での主体性が問われなければならない。本研究の目的は, 観察・実験における主体的探究者としての科学者と授業における学習者の認知的活動を比較して, その差異から授業を改善することである。その結果, 観察や実験の結果の考察においては, 観察・実験が確証をめざす当該の理論のみならず, その理論を含む理論体系の全体が学習に先行して概観されていなければならないことを示した。さらにアプリオリな理論体系の存在は, 問題の発見から仮説設定, 観察・実験の方法の決定といった一連の過程においても必然であることを示した。すなわち, 観察や実験で演繹されるべき理論(仮説)のみならず, 学習の成果として期待される理論の体系的全体の概観が, 当の学習の前提であるという循環論である。本論文ではこの問題を解決する具体策として, 教科書記述の改善と現在の教科書を使用した対応の方法を提案した。
著者
西内 舞 川崎 弘作 雲財 寛 稲田 結美 角屋 重樹
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.615-626, 2020-03-30 (Released:2020-04-15)
参考文献数
25

本研究では,学習者の理科学習の動機づけ向上のために「科学的能力」から「理科学習の意義」を認識する学習指導法を考案し,その効果を検証することを目的とした。そして,「科学的能力」について直接教授する学習と,普段の理科の学習の中で科学的能力を身に付けていると学習者自身に意識させる学習の二つからなる学習指導法を考案し,高校1年生を対象に,その効果を検証した。その結果,学習者が「科学的能力」を「理科学習の意義の認識」として認識すると,自律性の高い動機づけのうち「内発的調整」,「同一化・将来」,「同一化・成長」を向上させる指導法として有効であった。
著者
齋藤 惠介 原田 勇希 草場 実
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.107-117, 2020-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
27

近年,興味をポジティブ感情(強度)と価値の認知(深さ)から捉える理論的枠組みが提唱されており,強度と深さを望ましい状態に導くことが重要である。また,これまでの大規模調査より,我が国の生徒は理科全般に対する興味の強度に課題があることが示唆されているが,観察・実験に対する興味の強度は比較的良好に保たれていることが明らかになっている。そのため興味に介入する場合,観察・実験を足掛かりにすることが考えられるが,強度と深さのどちらを先行して育成すべきであるかについて未検討な点が多い。そこで,本研究では観察・実験に対する興味の強度と深さに注目し,理科全般に対する興味の強度との関連を検討することを目的とした。結果より,“理科学習に対するポジティブ感情”と“観察・実験に対するポジティブ感情”は別因子として抽出できたため,両興味は並存しえる構成概念であるといえる。また,生徒の観察・実験に対するポジティブ感情が低い状態で深い価値の認知に介入することは,理科全般に対するポジティブ感情をより低減させてしまう可能性が示唆された。このことから,教師は生徒の観察・実験に対するポジティブ感情の強度に応じて,興味の深さに介入していく必要があるだろう。
著者
島村 裕子 増田 修一
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.81-88, 2017-07-18 (Released:2017-08-04)
参考文献数
10

本研究では, 理科教育における花粉管の伸長を観察できる植物およびその最適条件を明らかにするために, 花粉管の伸長観察に適した植物の探索を行った。その結果, ホウセンカの花粉は, ショ糖濃度10%で最も発芽率が高かった。一方, サルスベリ, モクセンナおよびチャノキにおいては, ショ糖濃度15%において最も花粉管の伸長が認められ, いずれの植物においても0.5%のエタノールを加えることで花粉管の発芽率が高くなる傾向が認められた。また, 薬包紙に包んだ花粉をシリカゲルとともに密封容器に入れ, 乾燥条件下で家庭用冷蔵庫にて, 6ヶ月間冷凍保存したところ, ホウセンカおよびモクセンナの花粉は, 寒天培地に付着10分後に発芽を開始し, 冷凍前と同程度の花粉管の伸長速度が保たれていた。チャノキおよびサルスベリでは, 発芽までに30分から1時間を要したが, 授業の前に花粉を培地につけておけば, 授業時間内に花粉管の伸長を観察できることが示唆された。マリーゴールド, ジニアリネアリス, ヒャクニチソウ, センニチコウおよびヒオウギスイセンは, 花粉管の伸長観察には適していなかったが, 花粉が学校でよく扱われる植物とは異なる形状をしていることから, 理科教材として興味深く観察することができると考えられた。これら本研究で明らかにした花粉管の観察およびその伸長に適した植物およびその条件に関する情報は, 花粉管の観察・実験への利用・応用に資することが期待される。
著者
猪口 達也 後藤 大二郎 和田 一郎
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.229-242, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
12

本研究では, 主体的な学習を高める鍵となり得るメタ認知概念について, 社会性を加味した概念へと拡張し, それらの機能によって理科における資質・能力の育成に関わる問題解決活動の充実を図ることを目指した。具体的には, メタ認知概念の拡張に関して, Chiu & Kuo(2009)が提起した「社会的メタ認知(social metacognition)」の機能によってもたらされる5つの利益を援用し, 理科学習における問題解決活動の質の向上に関わる利益として捉え直した。その上で, それらの機能が問題解決活動にもたらす利益と併せて促進すると考えられる, 個人内メタ認知の活性化と科学概念構築の成立過程について, 小学校理科を事例に検討した。事例的分析の結果から, 社会的メタ認知の機能によってもたらされる5つの利益から, 問題解決活動の質の向上を捉えることが可能になった。さらに, 社会的メタ認知を通じた個人内メタ認知の機能の活性化が, 科学概念構築に寄与することが明らかになった。
著者
西内 舞 川崎 弘作 後藤 顕一
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.113-123, 2018-07-31 (Released:2018-08-22)
参考文献数
10

本研究では, 自己決定理論から動機づけを捉え「理科学習の意義の認識」が「相互評価表を活用する学習活動(以下, 相互評価活動と略す)への動機づけ」にどのような影響を与えているかについて明らかにすることを目的とした。本目的を達成するために, まず, 学習者が認識している「理科学習の意義の認識」と「相互評価活動への動機づけ」を測定するための質問紙を検討, 作成した。次に, 高校生を対象にこれらの質問紙による調査を実施し, 調査結果を基に「理科学習の意義の認識」が「相互評価活動への動機づけ」にどのような影響を与えているかについて共分散構造分析により明らかにした。その結果, 理科学習を通して, 学習者自身が, 「理科学習の意義の認識」を「科学的能力」が身に付くと捉えると, 「相互評価活動への動機づけ」のうち, 自律性の高い「同一化・成長」の動機づけに正の影響を与え, 自律性の低い「外的調整」には負の影響を与えていることが明かになった。また, 「理科学習の意義の認識」を「科学と身近な自然や日常生活の理解」と捉えると, 「相互評価活動への動機づけ」のうち, 自律性の高い「内発的調整」, 「同一化・成長」, 「同一化・将来」の動機づけに加え, 自律性の低い動機づけである「取り入れ・他者」にも正の影響を与えていることが明らかになった。つまり, 「理科学習の意義の認識」を「科学と身近な自然や日常生活の理解」と捉えると, 自律性の低い動機づけまで高めてしまう危険性が示唆されたと考えられる。
著者
原田 勇希 中尾 友紀 鈴木 達也 草場 実
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.409-424, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
27

本研究は,中学生の観察・実験に対する興味の構造を明らかにすることと,興味と学習方略との関連性について検討することを目的とした。確証的因子分析の結果,興味の構造として階層因子モデルが採択された。すなわち,観察・実験に対する興味は,“ポジティブな感情”の程度と,“観察・実験に対する価値の認知”の直交する2つの次元から捉えられることが示されたといえる。また,ポジティブな感情の程度と“思考活性志向”には観察・実験における深い学習方略(関連付け方略など)の使用を促進する効果が見出された。一方,“体験志向”は深い学習方略の使用を抑制する効果が見出された。さらに,本尺度の因子構造を反映した尺度得点の算出方法が検証され,分析用プログラムが作成された。
著者
濱保 和治 山崎 敬人 岡田 大爾
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.467-475, 2019-03-25 (Released:2019-04-12)
参考文献数
11

近年,教科を学ぶ意義や有用性についての意識の欠如とキャリア教育の重要性が指摘されている。平成20年9月「中学校学習指導要領解説理科編」においても,「日常生活や社会との関連」について理科で学習することが示され,理科学習でも教科内容との関連において,キャリア教育との関連を意識した指導を行うようになった。しかし,生徒の「日常生活との関連」についての意識は向上しているものの,理科学習の有用性を生徒自身に理解させることはできていない。そこで,大学との連携によって研究者が単元の学習内容に直接関わる授業を行い,社会貢献や職業選択のきっかけや夢などの話題を提供するといった教科学習に組み込んだキャリア教育を行うことで,教科学習の有用性を生徒が実感し,学習内容の深化を図るとともに将来の職業選択の可能性を広げることができると考えて,授業を計画・実施し,その効果を検証した。その結果,理科学習の有用性のうち職業生活への有用性や日常生活への有用性,及び日常生活との関連,学習意欲の向上に効果があることがわかった。
著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.397-407, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
17

本研究の目的は中学校の新入生に「生物多様性」の理解と,その多様性の解析手法である「進化思考」の形成過程を探ることにある。現行(平成20年改訂学習指導要領準拠)の中学校第1学年理科教科書における「生命編」の最初には,近隣のいろいろな環境に生息する「身近な生物」を観察しながら,顕微鏡の使い方など基本的技能の習得が目的とされてきた。平成29年改訂の新学習指導要領では,そこに「分類」の記述が加わり,「生物多様性」の理解が重視されるように改訂された。しかし,中学校現場では「身近な生物の観察」も通り一遍で終えられることが多い。そこで,新入生による初めての観察実習として,科学的な見方・考え方という観点を踏まえた授業を展開した。一方,「生物多様性の理解には進化に関する知識の習得が重要」であり,かつ「分類思考と系統樹思考を柱とした進化思考が多様性の解析手法の基盤である」という2つの提言がある。そこで,本研究ではその2つの提言に基づいて,「身近な植物」としてのタンポポの「分類」を手始めに,雑種タンポポ出現による「多様化」や,水中の小さな生物の「系統的分類」を事例に,進化の入門編を意図した授業を開発した。ワークシートの記述分析や質問紙調査の結果から,「生物多様性」や「科学的進化概念」の理解を一定程度促進することが明らかになった。
著者
髙山 真記子 大貫 麻美
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.363-369, 2014-11-17 (Released:2014-12-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2

高等学校「生物Ⅰ」で単元「動物の生殖と発生」の学習終了時に, 「生命の連続性」概念系に関する理解を深めることを目的としたコンセプトマップ法の導入を行った。この実践は, 2010年から2012年にかけて3回行った。実践Ⅰでは, 異なる学習区分で扱った内容の関連に気づき1つのマップを作ることができなかった学習者(レベル1)が18.1%存在した。そのため, 実践Ⅱ及び実践Ⅲでは, 教師から予め, すべての概念ラベルがとぎれることなくつながるようコンセプトマップを作成するよう指示をした。その結果, 実践Ⅱでは96.3%が, 実践Ⅲでは100%の学習者が異なる学習区分で扱った内容間に「受精」という関連事項を見出し, 一つのマップを作ることができていた(レベル2)。循環する「生命の連続性」概念系を示す学習者(レベル3)も, 実践Ⅰでは1%であったが, 実践Ⅱでは約80%に増加し, 実践Ⅲも同様の結果であった。感想文の分析からは, 生命の連続性に関する情意面をも含む学びの成果や, コンセプトマップ法の有意味性に関する記述があることが分かった。
著者
原田 勇希 坂本 一真 鈴木 誠
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.319-330, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究は, 中学生はいつ理科を好きでなくなるのか, 理科の好嫌の性差はいつ生じるのかを検討し, さらになぜ理科を好きでなくなるのかを期待-価値理論の枠組みから分析することを目的とした。本研究では, 期待の指標として各単元に対する統制感を, 課題価値認知の指標として各単元の学習内容に対する興味価値を測定した。分析の結果, (1)男女ともに中学校1年生で理科の好嫌が減退する。その後, 男子には明確な減退傾向はないものの, 女子では2年生でも顕著に減退すること, (2)理科の好嫌における性差は2年生から出現し, 3年生ではさらに拡大すること, (3)どの学年においても統制感と興味価値の両方が理科の好嫌に影響するが, 関連の様相は学年と単元によって異なること, (4)物理分野に該当する単元は他の単元と比較して統制感が低いことの4点が明らかになった。
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.293-293, 2013 (Released:2013-12-12)

戸倉則正・藤岡達也(2013)「津波に起因する河川災害の取扱いについての一考察―東日本大震災をふまえた津波に対する防災教育の観点から―」『理科教育学研究』第54巻,第1号,51–59.におきまして,DOIの命名規則の変更がございましたので,下記の通り訂正いたします。誌面につきましては次頁のようになりますので,ご利用下さい。なお,J-STAGE上の当訂正記事では,該当論文の全頁のPDFをご利用頂けます。著者ならびに関係者の皆様にお詫びを申し上げるとともに,訂正いたします。p.51<誤> doi:10.11639/JRSE12032<正> doi:10.11639/sjst.12032日本理科教育学会「理科教育学研究」編集委員会