著者
服巻 繁 野口 幸弘 小林 重雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.35-43, 2000-03-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

本論文は、知的障害者通所施設に在籍する一自閉症青年の行動障害の改善への取り組みである。介入に先立つ施設での取り組みとして、まず生態学的調査(家庭での生活範囲や生活スケジュールの調査)と施設内で自由に活動してもらい好みのものや活動、コミュニケーション能力などの行動観察を行った。その結果、好みの活動は洗剤や新聞の折り込み広告を見る、おやつを食べたりお茶を飲むこと、コミュニケーションの伝達方法としては文字が有効であることが明らかとなった。そこで、施設内で作業と好みの活動を交互に組み込んだ一日のスケジュールを作成し、更に生活環境を整えるといった支援を設定した。その結果、対象者の行動障害の多くが徐々に改善していった。しかしながら、自傷行動が残存したので、機能アセスメントに基づきこだわり行動の代替行動の形成を試みた。その形成に伴って、強度の自傷が改善された。また、同じ時期に家庭においても行動障害の改善が見られ、生活の幅が広がった。
著者
服巻 繁 野口 幸弘
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.131-138, 2005-07-31
被引用文献数
2

本研究では、施設内にある作業所で作業中に逸脱行動を繰り返す1名の自閉症青年に対して衝動的行動を改善するために、先行刺激操作による介入と結果操作による介入について検討を行った。先行刺激操作による介入として、作業や余暇など活動ごとに場所を設定し、注意散漫を予防する物理的環境整理、作業の後に好きな活動ができることを示したスケジュール表を用意した。作業中に逸脱した場合は、スケジュール表や文字カードを見せて「仕事に戻ってください」と活動に戻るよう教示する視覚的な手がかりによるルールの呈示を行った。しかし、それだけでは逸脱行動の減少にあまり効果がなかった。続いて、視覚的な手がかりによるルールにトークンシステムとレスポンスコストによる介入を加えた。逸脱なしに仕事を遂行した場合は100円を与え、逸脱した場合には半額の50円に減らした。貯金したお金で、本人の好きな洗剤や雑誌を購入することができ、作業中の逸脱行動が減少し作業の集中度が高まった。結果は、先行刺激操作と結果操作に関して、応用行動分析的考察を行った。