著者
木村 亨 船越 康信 竹内 幸康 野尻 崇 前田 元
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.120-125, 2009-03-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

1998年1月から2008年5月までに非小細胞肺癌に対して縦隔リンパ節郭清を伴う肺葉切除または肺全摘を施行した782例のうち,術後乳糜胸を来たした17例(2.2%)を対象とし,乳糜胸の診断,治療方法等につきretrospectiveに検討を行った.6例(35%)は脂肪制限食(A群),8例(47%)は絶食・高カロリー輸液(B群)で治癒したが,3例(18%)は胸管結紮術(C群)を必要とした.術後ドレーン排液量は術後5日間すべてC群で有意に多かった.脂肪制限解除時期(10.1±4.1日vs15.8±10.1日vs21.3±21.4日)はC群で遅く,ドレーン抜去時期(8.7±4.6日vs18.9±11.0日vs12.3±1.5日)と退院時期(28.1±9.9日vs43.8±17.6日vs77.0±66.3日)はA群で早い傾向にあった.術後乳糜胸は発生予防に留意するとともに,保存的治療にもかかわらず1000ml/日以上の排液が持続する場合は速やかな胸管結紮術を考慮すべきと考えられた.
著者
野尻 崇
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

臨床研究【肺癌手術に対するANPの前向き無作為化多施設共同比較試験(JANP study)】については、2015年9月1日~の症例登録を開始し、2017年度までに335例の症例登録を完了している。ANP投与群での有害事象(脳梗塞)発生の為、症例登録を中断し、その都度独立安全性モニタリング委員会で審議してきた。独立安全性モニタリング委員会では、左上葉切除後の脳梗塞が多く、肺静脈断端からの塞栓症の可能性が高く、術式に関連していることが疑われる、との審議結果であった。但し、約1年間の症例登録長期中断があった為、その間に対象患者が重複するJCOG試験「JCOG1413 臨床病期 I/II 期非小細胞肺癌に対する選択的リンパ節郭清の治療的意義に関するランダム化比較試験」が既に開始となっており、症例登録再開したとしても、実際に残りの症例集積が厳しい状況であることも踏まえ、症例登録再開はせず、335例で主要評価項目の解析へと進めることとなった。また、基礎研究としてANPと抗癌剤併用による抗腫瘍効果増強について、血管内皮細胞に対するANP投与による網羅的遺伝子解析や、転写因子解析によって、ANPの血管内皮細胞に対する鍵因子の同定を行うことができた。さらに、LPSやTNF-αによる炎症シグナル経路(NF-κB経路)とANP/GC-A経路との関連について、詳細なメカニズムの解析を進めた。平成30年8月末の退職に伴い、研究終了となった。