著者
小野塚 大介 萩原 明人
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、日本全国47都道府県のインフルエンザ患者1,851万人、感染性胃腸炎患者1,598万人、救急搬送患者3,552万人、病院外心肺停止患者約118万人を対象とし、気候変動による脆弱性が、地域や個人の効果修飾因子によってどのように異なるかについて、環境疫学的手法と社会疫学的手法を融合して解明することを目的とする。本研究により、効果修飾因子による気候変動への脆弱性の違いを全国規模で定量的に推定することが可能となり、地域や個人の特性に応じた気候変動-疾患発症予測モデルの構築、早期警報システムへの応用、疾病予防管理プログラムの改善、医療機関における医療従事者の確保や設備整備等、日本における気候変動適応策を進める上で重要な意義があると考えられる。研究2年目である令和元年度については、(1)文献レビューによる先行知見の整理、(2)データの取得、データクリーニング、データセットの突合、データベースの構築、(3)統計解析及び論文化、を行った。文献レビューによる先行知見の整理については、気候変動による健康影響(感染症、救急搬送、病院外心肺停止)について、国際誌を中心とした文献レビューを行い、先行知見について整理した。また、気候変動の指標として、地域の気象変化(気温、相対湿度、降水量等)のデータを、アウトカムの指標として、感染症発生動向調査に基づく患者情報、全国救急業務実施状況調査に基づく救急搬送データ、ウツタイン調査に基づく病院外心肺停止データをそれぞれ入手し、データベースを構築した。さらに、文献レビューの結果をもとに、研究デザイン、研究対象、データ収集、解析方法について検討し、統計解析及び論文化を進めているところである。
著者
吉村 壮平 古賀 政利 豊田 一則 中井 陸運 三輪 佳織 笹原 祐介
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳卒中の予防や、医療機関の診療レベルの向上のためには,脳卒中患者の登録事業により脳卒中診療の実態を知ることが不可欠である。わが国最大規模の、「日本脳卒中データバンク」のデータを人工知能(AI)を用いて解析することにより、脳卒中後の障がいを予測する方法と、それを臨床現場で活用できるシステムの開発を目的とする。簡易に利用可能なシステムが実用化されれば、脳卒中専門医以外の医療者や一般人であっても、脳卒中を起こして直ぐの時期にとるべき行動を決定する補助とすることができる。脳卒中を正しく診断し、適切に治療方針を立て、再発予防治療を行うことにより、重い障がいが残らないようにすることが期待される。
著者
野尻 崇
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

臨床研究【肺癌手術に対するANPの前向き無作為化多施設共同比較試験(JANP study)】については、2015年9月1日~の症例登録を開始し、2017年度までに335例の症例登録を完了している。ANP投与群での有害事象(脳梗塞)発生の為、症例登録を中断し、その都度独立安全性モニタリング委員会で審議してきた。独立安全性モニタリング委員会では、左上葉切除後の脳梗塞が多く、肺静脈断端からの塞栓症の可能性が高く、術式に関連していることが疑われる、との審議結果であった。但し、約1年間の症例登録長期中断があった為、その間に対象患者が重複するJCOG試験「JCOG1413 臨床病期 I/II 期非小細胞肺癌に対する選択的リンパ節郭清の治療的意義に関するランダム化比較試験」が既に開始となっており、症例登録再開したとしても、実際に残りの症例集積が厳しい状況であることも踏まえ、症例登録再開はせず、335例で主要評価項目の解析へと進めることとなった。また、基礎研究としてANPと抗癌剤併用による抗腫瘍効果増強について、血管内皮細胞に対するANP投与による網羅的遺伝子解析や、転写因子解析によって、ANPの血管内皮細胞に対する鍵因子の同定を行うことができた。さらに、LPSやTNF-αによる炎症シグナル経路(NF-κB経路)とANP/GC-A経路との関連について、詳細なメカニズムの解析を進めた。平成30年8月末の退職に伴い、研究終了となった。