著者
望月 昭 野崎 和子 渡辺 浩志 八色 知津子
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-20, 1989-03-31 (Released:2017-06-28)

4名の精神遅滞を伴う成人聾者を対象として, 4種の「表情画」(「かなしい」「おこる」「うれしい」「ふつう」), 対応する「サイン」, および「文字」の3者間の等価関係の獲得訓練を条件性弁別課題を用いて試みた。対象者のうち, 2名は「サイン」-「表情画」, 「文字」-「表情画」の2種の条件性弁別課題における選択行動を強化した結果, 「サイン」-「文字」課題と表出課題については, 直接訓練することなしに獲得することができた。他の2名については, 「サイン」-「表情画」課題に引き続き行われた「文字」-「表情画」課題の獲得が困難であり, 「サイン」-「文字」課題について直接訓練したところ, 他の課題についても完成することができた。表出への転移は, 4名の対象者ともに書字あるいはサインのいずれかで, 弁別訓練中に使用した表情について行うことができたが, 新たな人物の表情写真あるいは生きた人物の表情に対する表出の般化は, 直後のテストでは4名中2名で認められた。また, 訓練の脈絡を離れた場面で4名中2名について獲得した語彙を表出したことが報告されたが, 場面に適した使用が認められたのは1名のみであった。