著者
堀 和明 清水 啓亮 谷口 知慎 野木 一輝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.193-203, 2020-05-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
19

石狩川下流域には自然短絡で生じた小規模な三日月湖が多数分布する.本研究では調査者自身が容易に扱える,エレクトリックモーターを取り付けたゴムボートおよびGPS付き魚群探知機を用いて,5つの湖沼(ピラ沼,トイ沼,月沼,菱沼,伊藤沼)の測深をおこない,湖盆図を作成した.また,表層堆積物を採取し,底質分布を明らかにした.すべての湖沼で水深の大きい箇所は河道だった時期の曲率の大きな湾曲部付近にみられた.ピラ沼や菱沼,伊藤沼の湾曲部では内岸側に比べて外岸側の水深が大きく,蛇行流路の形態的特徴が保持されている.一方,トイ沼北部や月沼は最深部が外岸側に顕著に寄っておらず,全体的に水深や湖底の凹凸も小さい.このような特徴は埋積開始時期の違いを反映していると考えられる.すべての湖沼でシルトや粘土による埋積が進んでおり,特にピラ沼と菱沼の水深の大きな地点では有機物を多く含む細粒土砂が表層に堆積していた.