著者
野末 波輝 薬袋 淳子 成 順月
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2020 (Released:2020-06-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

【目的】認知症高齢者の病前性格とBPSDとの関連を男女別に明らかにする。【方法】病院に入院、または施設に入所しているBPSDを有する認知症高齢者と、そのキーパーソン216名を対象に、質問紙調査を実施した。BPSD12項目は担当の職員または認知症認定看護師に記入を依頼し、当事者の病前性格は日本語版Ten Item Personality Inventoryを用いて外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性の5つに分類し、キーパーソンから回答を得た。男女別に属性とBPSD12項目との関連をカイ二乗検定で調べ、病前性格とBPSD12項目との関連はスピアマン相関係数を算出し調べた。BPSDの有無を従属変数とし、単変量解析でp<0.1の変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】認知症高齢者121名に関する回答が得られた(回収率56%)。多重ロジスティック回帰分析の結果、男性では外向性傾向の性格はうつ(OR=0.54:95%CI 0.36-0.81)や不安(0.75:0.57-0.97)になりにくく、勤勉性傾向の性格は、うつ(0.73:0.53-0.97)になりくいが、脱抑制(1.88:1.32-2.67)を起こしやすく、協調性傾向の性格は食異常(1.60:1.17-2.12)、神経症傾向は易刺激性(1.47:1.10-1.97)を起こしやすく、開放性傾向の性格はうつになりにくかった(0.45:0.21-0.95)。女性では、外向性傾向の性格は易刺激性(1.27:1.06-1.52)、協調性傾向の性格はアパシー (1.68:1.24-2.26)と食異常(1.49:1.15-1.92)を起こしやすく、神経症傾向の性格は易刺激性(1.26:1.03-1.53)、勤勉性の性格は脱抑制(1.39:1.10-1.76)を起こしやすかった。【結論】男女別における病前性格とBPSDの関連が示唆され、BPSDの各症状に対する予防的取り組みや対処方法など検討できると考える。
著者
薬袋 淳子 野末 波輝 山田 裕加 福澤 大樹 橋本 廣子 成 順月 舩戸 恵子
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-10, 2022 (Released:2022-04-25)
参考文献数
14

要旨:本研究は,地域在住高齢者が認知症に移行しないことを目指して,地域包括支援センターと連携し,MCIの早期発見および回復に向けた取り組みを行う.方法は,日本の高齢者を対象に認知症関連リスク要因を検証した研究をシステマティックレビューし,その要点をチェック表にまとめ,本研究参加者約300名に1年間実施してもらう.同時にタッチパネルを用いて認知機能得点の変化を把握する.結果を分析し,取り組みの成果をまとめていく.認知症を薬により根本から治すことが確立されていない現在,地域在住高齢者が認知症に移行しないことが最重要となる.また,MCIからの回復が見込めない場合は,域包括支援センターに繋げていく仕組みを作る.これらの流れについて,本総説で概説する.