著者
中川 左理
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-39, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
安里 芳人 筒井 大輔 杉田 康 上野 隼平 橋本 倫季 天羽 惠佑 上田 一志 中崎 正太郎 狭間 研至
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
pp.2019.0029, (Released:2020-03-24)
参考文献数
9

2018 年度調剤報酬改定では,ポリファーマシー対策における薬剤師業務の評価を目的に服用薬剤調整支援料(以下,本支援料)が新設された.今回,当薬局にて本支援料を算定した123 名を対象に患者背景,減薬理由,薬効別内訳や薬剤師の経験年数などを解析するとともに,推定削減額と本支援料の関連を検証した.1 人当たりの薬剤数は,9.0 剤から6.0 剤に減少していた.うち,薬剤師の提案による減薬が274 剤(87.3%)を占めており,中止となった薬剤には消化器用剤と解熱鎮痛消炎剤の併用が多かった.服用薬剤数は80 歳から84 歳以下の10.7 剤がピークであったが,年齢と減薬数には大きな差はみられなかった.190 剤(69.3%)が漫然投与の改善であった.123 名で算定した本支援料は,延べ133 回166,250円であった.一方,本算定要件となる28 日間で薬剤費は461,680 円の削減となった.また,薬剤師の経験年数と本算定には関係性は認められなかった.薬剤師による服用後のフォローと薬学的見地からのアセスメント,医師へのフィードバックを基本サイクルとして,患者個々において薬剤師が医師や他の医療従事者と連携する環境を整えることは,服用薬剤数を減少させ,ポリファーマシーの改善に寄与するとともに,医療費の適正化にも貢献すると思われた.
著者
神谷 政幸
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
pp.2021.5009, (Released:2021-03-12)
参考文献数
5

要旨: 「薬剤師法」は,薬剤師全般の職務・資格などに関して規定する法律である.その成立までの道程には,「医制」の公布から続く,“薬剤師がその職能を十分に発揮できるようにし薬事の向上に貢献したい”という先人たちの熱い想いと取り組みがあった.それを振り返ることで,令和元年12月に公布となった「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)」(薬機法)および「薬剤師法」の改正を基に,現在の薬剤師のおかれている状況と求められていることを再確認すると,そこには,薬物治療において常に薬剤師が関わることで,これまで以上に国民の健康増進に寄与することが求められる姿があると考える.
著者
神谷 政幸
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-8, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
6

要旨:薬価基準には,2つの性格がある.1つが医療保険において使用できる医薬品の品目表としての性格,そしてもう1つがその医薬品の価格表としての性格である.我が国では国民医療費の総額は伸び続けており,その中で薬剤比率は22%前後で推移している.そのため,常に医療保険制度と財源を議論する際に,医薬品の価格に関する問題がついてまわることになる.2016年の秋から2017年末にかけて検討が行われた「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」においては,“「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し,国民が恩恵を受ける「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から,薬価制度の抜本改革に向け,PDCAを重視しつつ,以下のとおり取り組む”と記載されており,今後も引き続きの議論がされていくことになる.海外各国の薬価制度も参考にしながら,日本の医療保険制度に即しつつ医薬品提供体制を確保した薬価制度を検討していかなければならない.
著者
加茂 薫 大庭 哲治
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.41-53, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
12

要旨:本論文は,日本政府・厚生労働省が検討している調剤の外部委託化解禁とそれに伴う対人業務強化について,薬局現場で勤務している薬剤師の受容意識を明らかにすることを目的に,インターネットによる全国規模の意識調査を実施した.具体的には,勤務先薬局の規模・場所のほか,性別・年齢・臨床経験・雇用形態・1日の患者接触時間等を基本属性情報として尋ねると共に,厚生労働省ワーキンググループの会議資料1)を提示した上で,外部委託化解禁の是非,懸念点,外部委託化解禁により捻出される時間の活用方法,かかりつけ薬剤師や在宅医療等の対人業務への関与に対する意識について尋ねた.その結果,薬剤師より得られた1,069件の回答サンプルを分析したところ,外部委託化解禁に対する受容意識として,賛成・やや賛成の回答が524件であり,反対・やや反対の回答175件を大きく上回っていることを明らかにした.これは,日本政府・厚生労働省が意図している対人業務強化につながる可能性が高いことを示唆しているが,一方で,どちらともいえないの回答も370件あり,政策に対する内容の不明確さや薬剤師の理解の不十分さが課題であることも浮き彫りにした.
著者
藤永 智也 狭間 研至 岸 雄一
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
pp.2021.5003, (Released:2021-02-10)
参考文献数
13

要旨:国が推進している地域包括ケアシステムを実現するには,病院と地域の医療機関の連携が欠かせない.なぜなら、入院時や退院時に薬物療法の情報が「ない」「誤っている」「古い」場合は,患者に有害事象が起こる可能性がある.そのため,「安心安全な薬物療法」を患者に提供するには,病院-薬局間のシームレスな薬薬連携が必要である.思温病院で実践している薬薬連携の手段には,「退院時共同指導」「薬局薬剤師向けの薬剤管理サマリー」の2つがある.退院時共同指導と薬剤管理サマリーを実施した中で,「中心静脈栄養管理」「経腸栄養管理」「褥瘡管理」「血糖管理」「服薬管理」の5つは,医療資源が充実している病院と医療資源が限られている施設や自宅との違いがあるため,情報共有が重要となる.特に,「アドヒアランスが遵守できる服薬管理」などの対物業務と,「医薬品の適正使用」などの対人業務の2つの情報は,患者のQOLの維持・向上に欠かせないため,患者の入退院後も薬剤師が薬を渡した後にフォローし続けることが重要である.
著者
神谷 政幸
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-10, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
7

団塊の世代が後期高齢者となる2025 年に向けて,国は地域包括ケアシステムの構築を推し進めている.そのなかで薬局は医療提供施設として健康サポート機能を発揮することが期待されている.2018 年年末に公表された薬機法改正に伴う「とりまとめ(案)」において,薬剤師は調剤時のみならず,薬剤の服用期間を通じて,over-the-counter(OTC)医薬品等を含む必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行う義務があることを明確化するべきと記載されている.しかしながら,健康食品やOTC 医薬品に関する薬剤師への信頼は低く,かつ健康被害が起こっている状況を鑑みると,体調変化を継続して把握できる体制の構築が急がれる.そして,それは疾患発症後の薬物治療においても継続して行うことで,医療を質的に向上させることが可能になる.それを地域で連携して行うためには,患者やさまざまな医療職,介護職にその薬局がもつ機能を積極的に提示していくことが求められる.社会の変化に伴うニーズに応えていくことで,薬局・薬剤師が地域医療に大きく貢献する未来につながると信じている.
著者
柳本 ひとみ 櫻井 秀彦 古田 精一 黒澤 菜穂子
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-26, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
22

薬剤師の在宅業務において,薬物療法に有益な業務と課題を探索することを目的とし,web アンケート調査を行った.回収数は208 名であった.回答は5 件法とし,属性により層別化し比較を行った.「薬剤師が行う業務確認項目」および「患者/家族あるいは多職種からの情報確認項目」について,因子分析およびクラスター分析により回答群を分類し,属性と関連付けた.結果として,薬剤師は,「薬効」「副作用」などは確認しているが,患者の日常生活動作の確認には「性別」で差が見られ,患者/家族あるいは多職種からの情報収集の頻度は低くかった.分類された5 つのグループと「性別」は関連があった.薬物療法評価に役立つものは,「アセスメントシートを多職種で共有する」であった.今回示した16 項目の業務例の中で必要と思う業務を実施した場合,薬剤師は,「薬物療法の成果」「患者/家族のQOL」が向上し,「医師や看護師など多職種との連携が良くなる」「医師の治療方針に自分の意見が反映される可能性が高くなる」と考えていた.今後,薬剤師は,在宅業務確認ツール作成や,多職種共通尺度により薬物療法の評価を行うことで業務向上を図る必要がある.
著者
谷口 明展 香川 大輔 浦邉 啓太 賀嶋 直隆 永井 由佳 西村 由美
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.57-61, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
12

超高齢化社会となり,認知症高齢者数も増加している.認知症患者の服薬管理は困難を要することがあり,MMSE のスコアによっては適切な服薬支援でないと服薬できないことも多くあるためMMSE を活用した薬剤師による在宅服薬支援によって服用率が改善した3 症例を報告する.症例1 では,MMSE 26点でありお薬カレンダーによる自己管理と,ヘルパーによる声掛けによる在宅服薬支援の結果,服用率が7%向上した.症例2 では,MMSE 21 点でありお薬カレンダーと家族による電話による服薬刺激,薬剤師とヘルパーによる配薬と声掛けという服薬支援により服用率が4.8%向上した.症例3 では,MMSE 23 点であり,ヘルパー協力のもとお薬カレンダー利用により服用率が2.3%向上した,薬剤師により在宅の認知症患者への服薬支援最適化のためMMSE を活用することは服用率改善に効果が期待できると考えられる.
著者
薬袋 淳子 野末 波輝 山田 裕加 福澤 大樹 橋本 廣子 成 順月 舩戸 恵子
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-10, 2022 (Released:2022-04-25)
参考文献数
14

要旨:本研究は,地域在住高齢者が認知症に移行しないことを目指して,地域包括支援センターと連携し,MCIの早期発見および回復に向けた取り組みを行う.方法は,日本の高齢者を対象に認知症関連リスク要因を検証した研究をシステマティックレビューし,その要点をチェック表にまとめ,本研究参加者約300名に1年間実施してもらう.同時にタッチパネルを用いて認知機能得点の変化を把握する.結果を分析し,取り組みの成果をまとめていく.認知症を薬により根本から治すことが確立されていない現在,地域在住高齢者が認知症に移行しないことが最重要となる.また,MCIからの回復が見込めない場合は,域包括支援センターに繋げていく仕組みを作る.これらの流れについて,本総説で概説する.
著者
前原 理佳 吉野 奈美 後藤 聖子 赤嶺 美樹 吉田 友美 豊田 珠里 阿南 祐衣 大野 陽子 添田 悠希 竹中 夕奈 工藤 菜々美 小山 美紀 後藤 としみ 江藤 陽子 山本 恵美子 廣瀬 理恵 金松 友哉 石原 和美 前原 加代子 安藤 道雄 安藤 道子 兼田 眞 二ノ宮 綾子 岩本 隆記 三浦 みち子 濱﨑 洋子
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.17-23, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
6

地域包括ケアシステムの構築が急がれる中,薬局薬剤師の責務は広く深く重要である.その職能を十分に生かすことが今後迎える医療情勢の変化に必要不可欠であると考える.そのためには薬剤師の十分な気力体力が必要であり,それには機械化・ICT 化は不可欠であり,さらにパートナーという新しい医療資源の役割が重要となる.0402 通知を踏まえてパートナー業務の手順書,研修制度の構築,さらにパートナーの医療人としての育成成長を図ることで,薬剤師の職能が最大限に発揮できると考える.患者の薬物療法を支援するために必要な薬局薬剤師の取り組みとして,服用期間中の継続的な薬学的管理と患者支援が義務となり,医師への服薬状況に関する情報提供が努力義務となる.ますますパートナー制度の確立と薬剤師自らが希望している職能が最大限発揮できるやりがいのある,よい時代になると考える.