著者
山口 晴保
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.45-57, 2019 (Released:2020-06-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1
著者
野末 波輝 薬袋 淳子 成 順月
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2020 (Released:2020-06-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

【目的】認知症高齢者の病前性格とBPSDとの関連を男女別に明らかにする。【方法】病院に入院、または施設に入所しているBPSDを有する認知症高齢者と、そのキーパーソン216名を対象に、質問紙調査を実施した。BPSD12項目は担当の職員または認知症認定看護師に記入を依頼し、当事者の病前性格は日本語版Ten Item Personality Inventoryを用いて外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性の5つに分類し、キーパーソンから回答を得た。男女別に属性とBPSD12項目との関連をカイ二乗検定で調べ、病前性格とBPSD12項目との関連はスピアマン相関係数を算出し調べた。BPSDの有無を従属変数とし、単変量解析でp<0.1の変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】認知症高齢者121名に関する回答が得られた(回収率56%)。多重ロジスティック回帰分析の結果、男性では外向性傾向の性格はうつ(OR=0.54:95%CI 0.36-0.81)や不安(0.75:0.57-0.97)になりにくく、勤勉性傾向の性格は、うつ(0.73:0.53-0.97)になりくいが、脱抑制(1.88:1.32-2.67)を起こしやすく、協調性傾向の性格は食異常(1.60:1.17-2.12)、神経症傾向は易刺激性(1.47:1.10-1.97)を起こしやすく、開放性傾向の性格はうつになりにくかった(0.45:0.21-0.95)。女性では、外向性傾向の性格は易刺激性(1.27:1.06-1.52)、協調性傾向の性格はアパシー (1.68:1.24-2.26)と食異常(1.49:1.15-1.92)を起こしやすく、神経症傾向の性格は易刺激性(1.26:1.03-1.53)、勤勉性の性格は脱抑制(1.39:1.10-1.76)を起こしやすかった。【結論】男女別における病前性格とBPSDの関連が示唆され、BPSDの各症状に対する予防的取り組みや対処方法など検討できると考える。
著者
小池 彩乃 大嶋 玲子 田中 志子 内田 陽子
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-72, 2019 (Released:2020-06-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究の目的は、老人看護専門看護師実習で受けもちをしたBPSDをもつ認知症高齢者1事例に対して、睡眠センサーを用いて睡眠リズムを可視化させ、BPSD軽減につながるケアを実践し、その評価を行うことである。 A氏は、毎日深夜2時に行われる夜間の排泄ケアにより中途覚醒し、BPSDが悪化していた。そのため、①睡眠センサー(TANITA Sleep Scan®)を使用し、7日間の睡眠状況を可視化させ睡眠パターンを把握した ②中途覚醒が多い時間帯を目安にし、排泄ケアを行った。その結果、BPSDの症状軽減につながった。 深睡眠時の中途覚醒はBPSD悪化の要因となるため、睡眠パターンに基づいたケア提供が必要となる。特に認知症高齢者は、不快感や苦痛を言葉で伝えることが難しくなるため、睡眠センサー等を用いて客観的に睡眠状況をとらえ、より良い睡眠につながる眠りの評価を行うことが、BPSD軽減に重要である。
著者
山口 晴保 中島 智子 内田 成香 松本 美江 甘利 雅邦 池田 将樹 山口 智晴 高玉 真光
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-10, 2017 (Released:2018-11-06)
参考文献数
17

【目的】適切な医療を提供するため、認知症疾患医療センター外来受診者のBPSDの特性 をNeuropsychiatric inventory (NPI)を用いて検討した。 【方法】対象はMCI群16例と認知症群163例の計179例(80.2±6.9歳)。NPIと認知機能 (HDS-R)や年齢、病型との関係や各質問項目の出現頻度などを検討した。 【結果】MCI群ではNPI 13.3±20.6点、認知症群ではNPI 22.7±22.8点で、MCI群が低かっ た(有意差無し)。介護負担(distress)を表すNPI-DはMCI群10.5±10.9点、認知症群 10.1±9.8点で同等だった。病型別ではDLB群20例がADD群75例よりも有意に高かった (p=0.005)。相関を調べると、全体ではNPIがHDS-Rと有意な負の相関を示した(r=0.188, p=0.021)。認知症群では、NPI-DがHDS-Rと有意な負の相関を示した(r=-0.212, p=0.037)。NPIとNPI-Dは高い相関を示した(r=0.800, p<0.001)。出現頻度が高い項目 は無関心57.5%、興奮54.2%、易刺激性44.7%、不安39.7%、妄想36.9%の順であった。平 均点が高い項目は、興奮3.51、無関心3.12、易刺激性3.0、妄想2.63の順だった。NPI-Dを NPIで割って負担率を検討すると、興奮(0.6)や妄想(0.56)が負担になりやすく、多幸 (0.12)や無関心(0.3)は負担になりにくかった。 【考察】BPSDはMCIの段階からみられ、進行とともにBPSDが強まり、介護負担が増大 する傾向が示された。興奮や妄想は介護者の負担になりやすく、認知症疾患医療センター ではこれらのBPSDへの適切な対応を用意する必要がある。