著者
野本 有紀 長崎 勤
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.21-31, 2007-03-30

5・6歳児に対し、視覚的手がかり(中心要素・周辺要素)と手がかりなしの3条件を用いて、ナラティブ(フィクショナルストーリー)を聞かせ、その理解とリテリングによる産出の差異を検討した。その結果、理解においては5・6歳児では物語の中心要素は理解されていること、さらに6歳児の方が5歳児より物語を理解しており、中でも6歳児では周辺要素手がかりが理解を促進することが示された。産出においてはミクロ構造とマクロ構造の両面から分析し、両面において産出数では6歳児において周辺手がかりが最も産出を促進し、より長いリテリングが得られたが、産出される結束性の種類やストーリー構造は限定されていた。本研究の結果と先行研究の結果を合わせて考えると物語の理解と産出の双方において、中心から周辺要素へと獲得されていく過程が示唆されるとともに、5・6歳児がより高次なナラティブ産出のレベルへと移行する過渡期にあることが示唆された。