著者
野村 一高 岸田 昭雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.273-280, 1978-08-25

先枯病抵抗性の差異とフェノール性成分の季節的変化との関連を明らかにするため, 抵抗性と罹病性各4クローンの当年生枝中のフェノール性成分を1976年6月17日から10月16日までガスクロマトグラフィーで分析した。抵抗性の2クローンは6月から9月までtaxifolin-3'-O-glucosideを, また抵抗性の1クローンは8月から10月までafzelechinを含んでいたが, これらの成分は他のクローンでは見られなかった。抵抗性4クローンのcatechin含有量は6月から9月まで罹病性4クローンより多く, 抵抗性3クローンのtaxifolinは7月から9月にかけて増加し, 9月には罹病性4クローンの7倍以上の含有量となった。抵抗性2クローンの全フェノール含有量は常に罹病性の2倍以上で, また他の1クローンは6〜7月は罹病性と同程度であったが, その後急激に増加し, 9月には罹病性の2倍程度となった。また抵抗性クローンと同程度の濃度のcatechin と taxifolinは, 培地上で本菌の生育に対し抑制作用を示した。
著者
野村 一高
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.379-382, 1976-10-25

17年生カラマツの当年生枝と葉におけるフェノール性成分の質的, 量的変化を, TLCと分光光度計を用いて1975年6月1日から11月1日にわたって調べた。葉においては発達過程を通して質的変化はほとんど見られなかったが, ケンフェロールが落葉直前に現われた。当年生枝においてはケンフェロール-3-O-グルコシドが夏期に消失し, ケンフェロールが秋期に現われたが, 他の成分はすべての時期に同じように観察された。量的変化としては葉中のケンフェロール-3-O-グルコシドは春から秋にかけて増減は示さず, 落葉直前にわずかに増加し, 当年生枝中のカテキンは春から秋にかけて増加する現象が認められた。以上の結果からこれらの化合物の生理作用, 代謝, 転流について論じた。