著者
野村 拓也
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.67-74, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
42

本稿は,近年における消費環境の変化を背景とする消費者の物質主義に関する議論を統合的に整理する。ここでいう消費環境の変化とは,デジタル化の進展,シェアリングをはじめとする財の法的所有を伴わない消費形態の普及,ミニマリズムなどのような反物質主義的な価値観の流行を指す。これらの消費環境の変化は,種々の弊害があると問題視されてきた消費社会における物質主義の弱体化を象徴する現象として評価されることがある。本稿では,物質主義に関する初期の研究や,消費環境の変化に着目した研究のレビューを通じて,物質主義の弱体化を楽観的に期待する見解を批判的に検討する。そして,物質主義の概念を用いて今日の消費者行動と消費社会のあり方をより適切に理解するための視座を提供する。
著者
野村 拓也 福田 怜生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.73-83, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
11

本稿では,シェアすること自体の価値を,同じ製品を他の消費者と共同で利用する行為そのものに対して消費者が評価する価値とする。モノのシェアリング・サービスを提供する企業がシェアすること自体を顧客価値として訴求することは,一見当たり前のことに思える。しかし,積極的に取り組んでいる企業は決して多くない。本稿ではまず,シェアすること自体の価値を定義したうえで,多くの企業が訴求に対して積極的でない理由を先行研究から検討する。次に,多くの企業とは対照的に,徹底してシェアすること自体を顧客価値として訴求している事例として,ブランドバッグのシェアリング・サービスを展開するラクサス・テクノロジーズ株式会社の取り組みを紹介する。その後,同社の取り組みの意義を示す。最後に,本稿の示唆をまとめる。