著者
大賀 正一 野村 明彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

伝染性単核症(IM)の原因であるEpstein-Barrウイルス(EBV)は、免疫不全時に再活性化しB細胞リンパ腫/リンパ増殖性疾患(LPD)を、またT/NK細胞に感染して慢性活動性EBV感染症(CAEBV)や血球貪食症候群(HLH)などのリンパ網内系疾患を発症する。EBVがT細胞に感染したCAEBVやHLHは予後不良なEBV^+T-cell LPDである。私たちはCAEBV患児のT細胞活性化とoligoclonal増殖を明らかにし、活性化T細胞にEBVコピー数が多いこと、この細胞群のサイトカイン発現に異常のあることを明らかにした。このことはCAEBVにおける活性化T細胞の増殖が反応性というより、腫瘍化段階(clonal evolution)である可能性を示唆する。また、移植後LPDの発症予測に末梢血のEBV-DNA定量が有用であることも明らかにした。1)CAEBV-T細胞におけるEBV量とサイトカイン発現患児の末梢血よりcDNAを作成して、T細胞抗原受容体Vβ,Jβ領域遺伝子を用いたinverse PCR法により、T細胞レパートアを解析しoligoclonal増殖を明らかにした。このT細胞をCell Sorter(EPICS-XL)によりHLA-DR陽性(活性化)と陰性(非活性化)群に分画しDNAとRNA(cDNA)を作成した。DNAを用いてEBV-DNAの、cDNAを用いてサイトカインmRNAの発現量をreal-time PCR(TaqMan)により定量した。活性化T細胞はEBV量が多く、Th1(IFNγ,IL-2)/Th2(IL-10,TGF-β)いずれのサイトカインも高発現していた。2)EBV^+T/B-LPDにおけるEBV-DNAモニタリングの有用性EBV-DNA定量(全血)が移植後B-LPDおよびCAEBV(T-LPD)の発症と病勢の指標になることを証明した。