著者
金 鉉玉 矢澤 憲一 伊藤 健顕
出版者
日本会計研究学会
雑誌
会計プログレス (ISSN:21896321)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.23, pp.49-67, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
25

本稿では有価証券報告書におけるMD&A・事業等のリスク・対処すべき課題を対象とし,経営者交代が記述情報の変化に与える影響を実証的に分析した。その結果,経営者交代によって記述情報が変化することが明らかになった。具体的に,経営者交代によって記述情報のスティッキネス(過年度の記述情報の再利用度合い)が低下するとともにその可読性が向上すること,さらに記述情報のトーンがポジティブになることが,本稿の分析から示された。このような変化は,有価証券報告書の提出まで十分な時間があり,新任の経営者がその作成手続に実質的な影響を及ぼすことが可能であると考えられる,交代後第2 期目に提出される記述情報において顕著に観察された。さらに,経営者交代による記述情報の変化は新任経営者の属性や記述情報の記載されるセクションによって異なることも明らかにされた。このような本稿の発見は,経営者が有価証券報告書における記述情報を通じて投資家とコミュニケーションを行っていることの証拠といえる。
著者
金 鉉玉 藤谷 涼佑
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.59-87, 2022-05-31 (Released:2022-05-31)
参考文献数
44

本稿では,長期負債の返済のタイミングにおける雇用水準の変化を分析することで,企業が資金調達を目的として雇用水準を変化させるのかを検証する.2000年度から2018年度までの45,630企業/年を用いた分析の結果,長期負債の返済と雇用水準の変化は負の関係にあることがわかった.具体的には,次期に長期負債の返済を迎える企業はそうでない企業と比較して,当期の雇用水準が減少しているもしくはその増加が抑制されていることが確認された.このような傾向は,財務情報の質が高いほど,また銀行企業間関係が強いほど弱くなることも確認された.さらに,長期負債の返済と雇用水準との間の負の関係に財務情報の質が与える影響は,銀行企業間関係が弱い企業で強くなることも明らかになった.これらの発見は,代替的な資金調達のコストが高い企業ほど,雇用水準を変化させることで資金調達を行う傾向にあるという仮説と整合する.そして,この資金調達を目的とした雇用水準の変化に与える影響という点において,財務情報の質と銀行企業間関係とが代替的な関係にあることを示唆している.
著者
金 鉉玉 藤谷 涼佑
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
pp.450001, (Released:2022-04-05)
参考文献数
44

本稿では,長期負債の返済のタイミングにおける雇用水準の変化を分析することで,企業が資金調達を目的として雇用水準を変化させるのかを検証する.2000年度から2018年度までの45,630企業/年を用いた分析の結果,長期負債の返済と雇用水準の変化は負の関係にあることがわかった.具体的には,次期に長期負債の返済を迎える企業はそうでない企業と比較して,当期の雇用水準が減少しているもしくはその増加が抑制されていることが確認された.このような傾向は,財務情報の質が高いほど,また銀行企業間関係が強いほど弱くなることも確認された.さらに,長期負債の返済と雇用水準との間の負の関係に財務情報の質が与える影響は,銀行企業間関係が弱い企業で強くなることも明らかになった.これらの発見は,代替的な資金調達のコストが高い企業ほど,雇用水準を変化させることで資金調達を行う傾向にあるという仮説と整合する.そして,この資金調達を目的とした雇用水準の変化に与える影響という点において,財務情報の質と銀行企業間関係とが代替的な関係にあることを示唆している.