著者
藤 泰子 金 鍾明 栗原 志夫 松井 章浩 石田 順子 田中 真帆 諸沢 妙子 川嶋 真貴子 豊田 哲郎 横山 茂之 篠崎 一雄 関 原明
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.422, 2009

真核生物における遺伝子発現制御およびヘテロクロマチン形成には,ヒストンおよびDNAの化学修飾やsiRNAを介したエピジェネティックな機構が関与している.シロイヌナズナにおけるsiRNAを介したエピジェネティックな遺伝子抑制には, siRNA合成に関わる<I>RDR2</I>遺伝子, siRNAを介したDNAメチル化に関わる<I>DRM1, DRM2, CMT3</I>遺伝子, およびヒストン脱アセチル化酵素をコードする<I>HDA6</I>遺伝子が機能すると考えられている. <br>我々は, タイリングアレイを用いたゲノムワイドな発現解析により, <I>hda6</I>変異体において特異的に発現上昇が認められる遺伝子群を同定した. それら遺伝子群は, データベース上に公開されているsiRNAおよびDNAメチル化のマッピング領域と高度に重複していた. 一方, <I>rdr2</I>および<I>ddc</I>変異体(<I>drm1,drm2,cmt3</I>三重変異体)を用いた発現解析の結果から, <I>RDR2</I>や<I>DDC</I>により制御される遺伝子群は, 予想に反して<I>HDA6</I>遺伝子による制御領域とは殆ど一致しないことが明らかとなった. 以上のことから, <I>HDA6</I>による遺伝子抑制は, <I>RDR2</I>や<I>DDC</I>経路に依存しない機構であることが示唆された.
著者
藤 泰子 金 鍾明 松井 章浩 栗原 志夫 諸澤 妙子 石田 順子 田中 真帆 遠藤 高帆 角谷 徹仁 豊田 哲郎 木村 宏 横山 茂之 篠崎 一雄 関 原明
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.375, 2011

シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素HDA6は、RNA依存性DNAメチル化を介したヘテロクロマチン制御因子として同定されている。我々が行った全ゲノム発現解析の結果から、HDA6とDNAメチル化酵素MET1は、ヘテロクロマチン領域を主とした共通の遺伝子を抑制することが示された。また<I>hda6</I>機能欠損により、これら領域ではヒストンアセチル化の上昇など、エピジェネティックなクロマチン状態の推移が認められた。一方、同領域にはRDR2依存的な24nt siRNAが多数マップされるにもかかわらず、その転写活性は<I>rdr2</I>変異では殆ど影響を受けなかった。HDA6標的領域では周辺のDNAメチル化状態に呼応した2つのCGメチル化状態が観察された。周辺のDNAメチル化領域から孤立している場合では、<I>hda6</I>機能欠損により標的領域のCGメチル化は完全に消失していた。一方、DNAメチル化が隣接する場合には、CGメチル化が残留していた。また、これら両領域ではCGメチル化の状態に関わらず、CHGおよびCHHメチル化はともに消失し、転写が再活性化されていた。さらに、HDA6は周囲のDNAメチル化領域には結合せず、その標的領域にのみ結合していることが確認された。これらの結果から、HDA6はRNA依存性DNAメチル化経路に殆ど依存せず、MET1と協調して領域特異的なヘテロクロマチン抑制に機能することが示唆された。