著者
金井塚 生世
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.343-349, 1993-07-20 (Released:2010-11-18)
参考文献数
29

我々はCandida albicansのsecretory aspartate proteinase遺伝子の塩基配列中にpolymerase chain reaction (PCR) 法による増幅領域を設定し, 273bpの標的DNAがC. albicansで明らかに増幅されることを報告してきた. 今回はこの方法を用いて, 病理組織学的に内臓カンジダ症と診断された剖検材料20件のパラフィン包埋組織からDNAを抽出し, PCR法で診断可能か否かを検討した. その結果, 全例に273bpのDNA断片の増幅が観察され, サザンプロットハイブリダイゼーションでC. albicansのプローブDNAの結合が確認された. しかも, 対照としたカンジダ症でない内臓および脳のパラフィン包埋組織19件からは目的とするDNAの増幅は認められなかった. また, このPCR陽性のパラフィン包埋組織20件に抗カンジダ抗体を用いた免疫組織化学染色を行ったところ, 20件すべてに菌要素の多寡はあるものの陽性所見が認められ, 対照群ではすべて陰性であった. このように, PCR法を用いることにより, 内臓カンジダ症のパラフィン包埋組織からもC. albicansのDNAの検出が可能であることが明らかとなり, 本法はカンジダ症の新たな診断法となり得ることが示唆された.