著者
金光 淳
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.114-131, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
25

近年日本各地で開催されているアート・フェスティバルはアートによる「観光のまなざし」を地域に内省化することで,観光客の側にも住民の側にも新たな地域表象を結像させている可能性がある.それはどのように地域イメージの形成に貢献しているのか,またそれは地域社会の問題をどのように可視化しているのかを瀬戸内国際芸術祭で探った.小豆島と豊島で行われた島ブランド・イメージ連想調査データのネットワーク分析は,1)産業が盛んで伝統的な地域イメージが形成されている小豆島では,アートはそれにほとんど貢献しておらず,産物,観光とメディア・コンテンツの連想イメージが前面化している;2)これとは対照的に産業が衰退し確固たる地域イメージが形成されていない豊島においては,地域表象形成におけるアートの役割は大きい.アート・フェスティバルは感覚的反応,他地域の連想を伴ないつつ,美しい瀬戸内の風景に助けられ豊かな美的空間を形成するのに貢献している;3)豊島では産業廃棄物問題は大多数の観光客には見えていないものの,地域の記憶を伝承するアート作品やシンボリックな豊島美術館を通してこの問題が観光客の一部にも連想されており,アート・フェスティバルは観光客の産業廃棄物問題の可視化にある程度貢献している,ことが明らかになった.これらの知見を基に瀬戸内国際芸術祭の課題が論じられた.
著者
金光 淳
出版者
京都産業大学マネジメント研究会
雑誌
京都マネジメント・レビュー (ISSN:13475304)
巻号頁・発行日
no.29, pp.27-50, 2016-09

ウェブ調査による都市ブランド調査によって109都市(一部地域)の都市ブランドの構造とその生成メカニズムが解明される.衣食住遊,経済政治社会分野にわたる21のブランド要素からなる都市ブランドモデルで測定されたスコアでは東京都心部と京都市をトップとする不平等構造が明らかになった.また因子分析は4種類の都市類型の分化構造を明らかにし,多重対応分析によって4類型に対応した「伝統・観光都市」「近代的大都市」「地方都市」「大都市郊外都市」の都市分布構造マッピングが描出された.さらに地理空間変数と諸都市資本(自然資本,文化資本,社会関係資本,創造資本)によるクラスター分析によっても「中核都市クラスター」「大都市郊外都市クラスター」「地方都市クラスターI」「地方都市クラスターII」「周辺都市クラスター」の階層的都市システムが明らかにされた.最後にPLS回帰分析による都市ブランドに対する諸資本の効果分析では,「都市ブランドの地理的埋め込み仮説」「高都市ブランド高文化資本仮説」「高都市ブランド高寛容性仮説」「 高都市ブランド創造都市仮説」が支持されたが,「高都市ブランド高ソーシャル・キャピタル仮説」は支持されなかった.これらの結果から今後の都市ブランディングに関するインプリケーションと課題が示された.