著者
金南 咲季
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.113-133, 2016-05-31 (Released:2017-06-01)
参考文献数
23

本稿は,地域社会における外国人学校と日本の公立学校の相互変容過程を,接触によって立ち現れる教育実践に着目して描き出すものである。そのうえで,従来の研究が看過してきたミクロな地域的観点から「外国人学校」を捉え直す視座と,ローカルな地域的実態を踏まえた支援の在り方について示唆を提示することを目的とする。 具体的には新興のコリア系外国人学校T校と校区の公立2小1中を事例に,その接触の様相を「コンタクト・ゾーン」を視点として記述した。 本稿の知見は以下に纏められる。第一に,T校と校区の公立学校は非対称な力関係のもとで出会うが,既存の実践を問い直していくなかで双方に主体化し交流をもつようになっていた。第二に,接触の継続のなかでは,授業実践や構成員の変容,新たな軋轢とそれを契機とする連携強化,進学制度の創出と活用といった展開がみられた。第三に,その背景には社会的不利益層のエンパワメントを重視する校区の地域教育組織と,構造的な窮状に直面しつつも教育理念の実現を見据えて地域社会との関係構築を進めるT校の主体性が重要な役割を果たしていた。 以上より,所与の環境や固有の構造的制約に規定されつつも,単に受動的に対処するだけでなく,既存の実践を問い直し相互に教育資源と位置づけ合うなかで,双方の教育実践を発展的に展開する外国人学校と校区の公立学校の姿が明らかとなった。踏まえて最後に学術的示唆と政策的示唆を論じた。