著者
阿部 晃気 日根 恭子 金塚 裕也 中内 茂樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-029, 2021 (Released:2022-03-30)

音楽聴取時の覚醒度は,音楽の選好と関連があり,選好の決定機序を明らかにするうえで重要な要素の一つである。これまで,覚醒度は音楽のテンポ(外部テンポ)により変化することが明らかとなっているが,歩行や指タッピングのような自発的な運動動作(内部テンポ)が覚醒度とどのように関連するのか直接的な検討はなされていない。本研究では,外部/内部テンポが音楽聴取時の覚醒度とどのように関連があるか調査した。実験参加者21名に対して,初めに指タッピングで内部テンポを計測した。その後,3種類(遅い,速い,中程度)のテンポで演奏されたクラシックピアノ音楽を各2曲,計6曲の聴取を求めた。実験中は,実験参加者に対して覚醒度の客観的指標となる皮膚電気活動の計測が行われ,各曲聴取後は,音楽によって誘発された覚醒度の主観的評価を求めた。結果として,主観的覚醒度は,外部テンポが遅いと下降,外部テンポが速いと上昇した。一方,客観的覚醒度は,内部テンポと外部テンポの差が小さい場合に上昇する傾向がみられた。この結果は,外部テンポと内部テンポの両方が音楽聴取時の覚醒度に影響を与えることを示唆している。