著者
神野 智史 金崎 真聡 松井 隆太郎 岸本 泰明 小田 啓二 山内 知也 上坂 充 桐山 博光 福田 祐仁
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.483-489, 2019-10

レーザー駆動イオン加速技術において,ミクロンサイズの水素クラスターのクーロン爆発を利用して,高繰 り返しで,multi-MeV の純陽子線を発生させる方法を提案した.本研究において,クライオスタットで冷却した 高圧水素ガスをパルスバルブに接続した円錐ノズルを介して真空中に噴射することによりミクロンサイズの水素 クラスターターゲットを発生させる装置を開発した.水素クラスターのサイズ分布は,散乱光の角度分布から Mie 散乱理論に基づき,Tikhonov 正則化法を利用して数学的に見積もった.25 K,6 MPa の状態の水素を噴射し た場合,クラスターの最大サイズは 2.15±0.1 μm であると見積もられた.その上で,J-KAREN-P 施設において水 素クラスターをターゲットとした 0.1 Hz 高繰り返し陽子加速の実証実験を行った.トムソンパラボラスペクトロ メーターを用いたエネルギー測定では,最大 7 MeV の純陽子線を観測した.高出力レーザーパルスとミクロンサ イズ水素クラスターの相互作用過程に関する三次元 Particle-in-Cell(PIC)シミュレーションにおいては,レー ザー伝搬方向に加速される 300 MeV におよぶ高指向性の準単色陽子発生が予測され,本手法は,将来的に高繰り 返しの高エネルギー高純度陽子源の有力候補になる可能性を秘めている.