著者
金指 達郎 鈴木 基雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.298-303, 2010 (Released:2011-02-16)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

著者らが開発したスギ花粉飛散予報モデルを応用して, 首都圏への寄与度の高いスギ花粉放出源の推定を試みた。評価の指標として, 花粉飛散期間中の平均花粉濃度と, 花粉濃度と当該地域の人口の積(花粉暴露指標とする) の二つを用いた。花粉放出源を含まない狭いターゲット領域 (東京駅を中心とした半径10kmの円内, 領域内人口500万人強) を対象にした場合にはいずれの指標でも類似した結果であった。一方, 広域首都圏 (東西約90km, 南北約80km, 領域内人口約3,000万人) を対象とした場合には花粉濃度を指標に用いると, その内部にある花粉放出源メッシュの効果が非常に強く推定された。また, 推定対象年によって推定結果が異なった。そのため, 花粉放出源対策地域の優先順位選定にこの手法を適用する際には, 複数年の結果を総合的に判断することが重要であると考えられた。
著者
杉田 久志 金指 達郎 正木 隆
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.456-464, 2006-12-01
被引用文献数
8 6

岩手県の黒沢尻試験地の落葉低木型林床ブナ林における皆伐母樹保残法による天然更新施業試験地の更新実態について解析した。1948年伐採(保残母樹密度6本/ha)で刈払いを実施した林分は,伐採後54年の時点でブナ純林状の再生林となっていた。1969年伐採林分(保残母樹密度13本/ha)のうち,刈払いを省略した林分では伐採後33年の時点でウワミズザクラ,ホオノキなどの再生林となっており,ブナ更新樹はわずかしかみられなかった。刈払いを実施した林分では,多数のブナ更新樹がみられL字型の直径階分布を示したが,保残母樹の樹冠下およびその周辺に限られ,林冠層に達しているものは少なく,ブナ優占の更新林分が成立している状態ではなかった。以上の結果から,刈払いがブナ稚樹の定着,生存に大きな効果をもつことが示されたものの,刈払いが実施され多くのブナ稚樹が定着した林分がその後必ずしもブナ再生林へと推移しているとは限らないことが判明した。刈払いの実施にもかかわらずブナの更新状況にちがいを生じさせた要因として,施業とブナ結実とのタイミングに加えて,施業前のブナ稚樹生育状態も関係している可能性がある。