著者
正木 隆 佐藤 保 杉田 久志 田中 信行 八木橋 勉 小川 みふゆ 田内 裕之 田中 浩
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.17-23, 2012-02-01 (Released:2012-05-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 6

苗場山ブナ天然更新試験地の30年間のデータを解析し, 天然更新完了基準を検討した。試験地では1968年に5段階の強度 (皆伐∼対照区) での伐採, および5通りの林床処理 (刈り払い, かき起こし, 除草剤散布等) が行われ, 1978年には残存母樹も伐採された。本研究では残存母樹の伐採から4年後の1982年と2008年の植生調査 (各種の被度および最大高) および樹木の更新調査 (稚樹密度および稚樹高) の結果を解析した。高木性の樹木が更新 (2008年に高木性樹種の被度50%以上) する確率は, 1982年当時の稚樹密度・稚樹高・植生高でよく説明され, ブナに対象を限定した場合では, 稚樹の密度と高さのみでよく説明された。高木性樹種の更新の成功率は, 稚樹の密度が20万本/ha以上, かつ植生が除去された場合にようやく8割を超えると推定された。各地の広葉樹天然更新完了基準では, 稚樹高30cm, 密度5,000本/haという例が多いが, この基準は低すぎると考えられた。伐採前に前生稚樹の密度を高める等の作業を行わない限り, 天然下種によるブナ林の更新は難しいと考えられた。
著者
杉田 久志 金子 岳夫
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.38-41, 2004

岩手県浄法寺町の稲庭岳の山頂付近にはオオシラビソが分布している。その分布状況について調査した結果,樹高2.5m,胸高直径5.2cmのものが1個体確認されたのみであった。このオオシラビソは最も近い他の山の分布域(八幡平)から22km離れており,他の集団から隔絶された微小集団の分布事例であるとみなされる。
著者
杉田 久志 金子 岳夫
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.38-41, 2004-03-31 (Released:2018-03-19)

岩手県浄法寺町の稲庭岳の山頂付近にはオオシラビソが分布している。その分布状況について調査した結果,樹高2.5m,胸高直径5.2cmのものが1個体確認されたのみであった。このオオシラビソは最も近い他の山の分布域(八幡平)から22km離れており,他の集団から隔絶された微小集団の分布事例であるとみなされる。
著者
杉田 久志 岩本 宏二郎 森澤 猛
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.81-89, 2008-06

御嶽山南東面の密なチマキザサ林床をもつコメツガ、トウヒ、シラビソ、オオシラビソの混交した亜高山帯針葉樹林において、50m×50mの調査プロットを設置し、林分構造と8年間の動態を解析した。林冠層は隙間が多く、その面積比率は32%であった。シラビソとオオシラビソはL字型の胸高直径階分布を示し、コメツガとトウヒは一山型の林冠木集団とL字型の被陰木集団とが分離する分布を示した。コメツガとトウヒは根返りマウンドや根張り上で定着したもの、あるいはタコ足形態のものが多く、地表で定着したものはほとんどなかった。シラビソとオオシラビソは地表で定着したものが比較的多くみられたが、その割合はシラビソで15%、オオシラビソで35%にすぎず、大半は根返りマウンド、根張り、岩の上に定着したもの、あるいはタコ足状形態のものであった。モミ属樹種の定着場所が地表以外の基質に偏ることは、密なチマキザサによる地表での定着阻害が林分構造に影響していることを示唆する。1998~2006年の林分全体の死亡率、加入率(胸高直径5cm以上)、胸高断面積の減少率、増加率はそれぞれ0.60%/年、1.44%/年、0.91%/年、0.96%/年であった。樹種別にみると、トウヒのみで死亡率・減少率が加入率・増加率を上回り、その他の樹種は逆の関係を示した。
著者
杉田 久志 金指 達郎 正木 隆
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.456-464, 2006-12-01
被引用文献数
8 6

岩手県の黒沢尻試験地の落葉低木型林床ブナ林における皆伐母樹保残法による天然更新施業試験地の更新実態について解析した。1948年伐採(保残母樹密度6本/ha)で刈払いを実施した林分は,伐採後54年の時点でブナ純林状の再生林となっていた。1969年伐採林分(保残母樹密度13本/ha)のうち,刈払いを省略した林分では伐採後33年の時点でウワミズザクラ,ホオノキなどの再生林となっており,ブナ更新樹はわずかしかみられなかった。刈払いを実施した林分では,多数のブナ更新樹がみられL字型の直径階分布を示したが,保残母樹の樹冠下およびその周辺に限られ,林冠層に達しているものは少なく,ブナ優占の更新林分が成立している状態ではなかった。以上の結果から,刈払いがブナ稚樹の定着,生存に大きな効果をもつことが示されたものの,刈払いが実施され多くのブナ稚樹が定着した林分がその後必ずしもブナ再生林へと推移しているとは限らないことが判明した。刈払いの実施にもかかわらずブナの更新状況にちがいを生じさせた要因として,施業とブナ結実とのタイミングに加えて,施業前のブナ稚樹生育状態も関係している可能性がある。
著者
伊佐治 久道 杉田 久志
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.121-129, 1997
参考文献数
29
被引用文献数
6

The removal of fallen seeds of Aesculus turbinata was investigated by simple marking methods. In order to clarify the agent animals, an experiment was carried out to examine the sizes of the animals using a set of netted cages with different-sized apertures, together with wood mouse censuses. Current-year seedlings were found on the upper part of the slopes than the upper front line of the crowns of A. turbinata, where no seeds had fallen in the previous autumn. Of the total fallen seeds, 96% were removed from their original location and then disappeared by the end of autumn. Line marking revealed that the mean interval for transportation was 12 days, and that the mean and maximum transportation distances for non-missing seeds were 0.61 m and 2.11 m, respectively, although the lines of most of marked seeds had been cut and the seeds were missing. The maximum distance from the original location to the missing point was 6.45 m, and seeds were buried in cases of 31.5% of transportation. The agent animals were assumed to be small enough to allow them to pass through as aperture size of less than 40 mm but more than 16 mm. Feeding signs on seeds, and droppings found around seeds, seemed to be those of wood mice. The mouse censuses showed that Apodemus speciosus and A. argenteus were dominant. Thus, it is concluded that fallen seeds of A. turbinata were transported through the scatter-hoarding behavior of wood mice, mainly A. speciosus.
著者
杉田 久志
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.217-227, 1988-12-31
被引用文献数
10

At higher elevations on Mt. Asakusa, one of the mountains characterized by deep snow accumulation in Japan, the relationship between snow depth and the distribution pattern of plant communities was studied in connection with topographical conditions. Dwarfed Fagus crenata forests in the northwestern〜western part (N〜W slope), and scrubs and meadows in the southern〜eastern part(S〜E slope). The snow depth in meadows was the deepest among the four plant communities, and that in scrubs was deeper than those in Fagus crenata forests and dwarfed Fagus crenata communities. However, little difference in snow depth was found between Fagus crenata forests and dwarfed Fagus crenata communities. Therefore, it is difficult to explain the distribution of plant communities only by the snow depth. It is presumed that topographical conditions affect not only the distribution of snow depth but also the effects of the snow on plants, and that consequently the distribution pattern of plant communities is determined through the influence of the topography.