著者
直江 将司 阿部 真 田中 浩 赤間 亮夫 高野 勉 山崎 良啓 藤津 亜季子 原澤 翔太 正木 隆
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.34-40, 2017-02-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
32

放射性セシウムの空間分布の実態を評価し,空間分布に影響している要因を検討することを目的として,2011年と2012年に茨城県北端の落葉広葉樹林内に61個のリタートラップを設置し,回収したコナラ落葉の放射性セシウム濃度を測定した。落葉の放射性セシウム濃度と落葉採取地点の斜面方位,傾斜度,落葉量の関係を調べたところ,2011年において,コナラ落葉の放射性セシウムの空間分布は一様ではなかった。東向き斜面の落葉の放射性セシウム濃度は西向き斜面の落葉のものよりも高く,また落葉量が大きいほど落葉の放射性セシウム濃度が高かった。2012年においても,空間分布の偏りは小さくなったものの同様な傾向がみられた。これらの原因としては放射性セシウムが原発事故時に大量放出された際の風向きが調査地付近では東風であったことなどが考えられた。
著者
小池 伸介 正木 隆
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.26-35, 2008 (Released:2008-10-15)
参考文献数
118
被引用文献数
17 16

食肉目による果実食の実態を把握するため,ツキノワグマ,テン,タヌキの3種を対象に,文献情報に基づいて果実の利用を分析した。その結果,ツキノワグマとタヌキは高木・ツル植物の果実をよく利用していたが,テンは低木とツル植物果実をよく利用していた。ツキノワグマは液果だけではなくブナ科の堅果などをよく利用していた。このような種間差は,高木の樹冠部にアクセスできる能力や利用する果実タイプが種によって異なるためと考えられた。また,ツキノワグマは脂肪分に富む果実を利用する傾向を示したが,他2種はそれらをあまり利用していなかった。これは冬季の冬眠の有無を反映していると考えられた。さらに,いずれの種も多くの樹種の液果を利用していることから,森林における種子散布者として重要な機能を果たしている可能性が高いと考えられた。
著者
正木 隆 柴田 銃江
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.359-369, 2005-08-31
被引用文献数
5

日本で例外的に広域または長期におこなわれてきた森林研究の成果のうち、いくつかを紹介した。第一に、北上山地でミズナラの種子落下を23年間(1980-2002年)調査した研究では、際立った豊作(健全種子100個/m^2以上)が1987年と1996年に見られ、そのほかの年では30個/m^2以下の低値安定であった。種子生産の豊凶を示す変動係数(CV)は20年以上の観測をおこなわないと安定した値が得られないことが示された。第二に、東北地方の国有林の約150の森林事務所(範囲は200×500 km)でブナの結実状況の視認が1989年以来継続してきている。2000年までの12年間に、観測点の8割以上で並作以上だったのは1995年と2000年の2回のみであった。それ以外の年では、東北地方の一部でのみ結実するか、またはほとんど結実がみられなかった。結実が同調しているスケールは60-190 kmと判断されたが、これは広域調査をおこなったからこそ把握できた知見である。一方、ブナの花芽形成のトリガーの検出には、林分単位で気象条件をモニタリングする必要のあることが示唆された。これらのブナやミズナラの長期・広域での結実モニタリングから、それを餌とする野生生物の保全管理に有益な情報が提供されることが期待される。第三に、スギ人工林(明治41年植栽)を間伐した試験地で、昭和28年(45年生)から平成14年(94年生)までのモニタリング結果に基づいて、スギの成長を個体ベースで解析した。どの林齢でもスギの直径成長は周辺の自己より大きいスギの胸高断面積合計から負の影響を受けていた。また、45年生時点での各個体のモデル予測値と実測値の差分を計算し、それをモデルの説明変数として加えたところ、それ以降の林齢でモデルの決定係数が0.1-0.2ほど改善された。これは、森林動態予測モデルの開発や、長伐期経営における個体管理技術に貢献する成果である。一方、天然林動態の長期観測研究は開始されてからまだ約10年で、群集動態のメカニズムの解明には至っておらず、さらなる長期観測が重要であると考えられた。林業を産業として再生することなしに、長期・広域観測による森林の科学的研究を深化させることは困難であることを論じた。
著者
杉田 久志 金指 達郎 正木 隆
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.456-464, 2006-12-01
被引用文献数
8 2

岩手県の黒沢尻試験地の落葉低木型林床ブナ林における皆伐母樹保残法による天然更新施業試験地の更新実態について解析した。1948年伐採(保残母樹密度6本/ha)で刈払いを実施した林分は,伐採後54年の時点でブナ純林状の再生林となっていた。1969年伐採林分(保残母樹密度13本/ha)のうち,刈払いを省略した林分では伐採後33年の時点でウワミズザクラ,ホオノキなどの再生林となっており,ブナ更新樹はわずかしかみられなかった。刈払いを実施した林分では,多数のブナ更新樹がみられL字型の直径階分布を示したが,保残母樹の樹冠下およびその周辺に限られ,林冠層に達しているものは少なく,ブナ優占の更新林分が成立している状態ではなかった。以上の結果から,刈払いがブナ稚樹の定着,生存に大きな効果をもつことが示されたものの,刈払いが実施され多くのブナ稚樹が定着した林分がその後必ずしもブナ再生林へと推移しているとは限らないことが判明した。刈払いの実施にもかかわらずブナの更新状況にちがいを生じさせた要因として,施業とブナ結実とのタイミングに加えて,施業前のブナ稚樹生育状態も関係している可能性がある。
著者
正木 隆 森 茂太 梶本 卓也 相澤 州平 池田 重人 八木橋 勉 柴田 銃江 櫃間 岳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.48-57, 2011
被引用文献数
1

林冠の閉鎖した94年生アカマツ人工林において, 間伐後8年間の個体の成長経過を同齢の無間伐林, 140年生天然アカマツ林と比較しつつ, 成長が改善されたか否か, 成長変化と相関する因子は何か, この人工林を天然アカマツ林のような大径木を含む林型に誘導できるか否か, を検討した。サイズは天然林 (DBH=68 cm, <I>H</I>=30∼35 m) の方が人工林 (DBH=41 cm, <I>H</I>=25∼30 m) よりも高い値を示した。形状比は人工林で50∼80, 天然林で40∼70だった。樹冠長率は人工林0.2∼0.4に対し, 天然林では0.25∼0.5だった。間伐により人工林の約4割の個体の成長が0.1 cm yr<SUP>−1</SUP>改善されたが, 無間伐林では逆に8割の個体の成長が低下した。個体の成長の改善度は, 隣接個体との競合環境の変化や, 樹冠長率など個体の着葉量の指標と連関していなかった。この人工林が140年生時に天然林のような大径木を含む林型に達するには, 今回観測された成長の改善では不十分である可能性が高いと考えられた。