著者
田坂 樹 日髙 玲奈 岩佐 康行 古屋 純一 大野 友久 貴島 真佐子 金森 大輔 寺中 智 松尾 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.312-319, 2023-03-31 (Released:2023-04-28)
参考文献数
19

目的:回復期リハビリテーション(リハ)において,口腔問題解消と摂食機能向上のためには,適切な口腔機能管理が不可欠である。今回われわれは,回復期リハ病棟における歯科の関わりを明らかにするため全国調査を実施した。 方法:回復期リハ病棟協会会員の1,235施設を対象に,歯科との連携に関する自記式質問調査を実施した。質問内容は,歯科との関わり方,連携による効果などから構成された。回答を記述統計でまとめ,歯科連携体制によって回答に相違があるか検討した。 結果:319施設(25.8%)から得られた回答のうち,94%の施設で入院患者への歯科治療が実施されていたが,そのうち院内歯科が26%,訪問歯科が74%であった。常勤の歯科医師と歯科衛生士の人数の中央値は0であった。院内歯科がある施設のほうが,訪問歯科対応の施設よりも歯科治療延べ人数が有意に多く,歯科との連携による効果として,患者や病棟スタッフの口腔への意識の向上との回答が有意に多かった。 結論:本調査より,限定的ではあるが,院内歯科がある施設では,常勤の歯科専門職は少ないが歯科との連携の効果を実感している施設が多くあった。一方,本調査の回答率から,回復期リハ病棟を有する病院では,歯科との連携がなされていない施設が多くあることも考えられた。今後,回復期リハにおける医科歯科連携強化に向けて,エビデンスの創出や診療報酬の付与が必要であると考えた。
著者
小林 義和 松尾 浩一郎 渡邉 理沙 藤井 航 金森 大輔 永田 千里 角 保徳 水谷 英樹
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.69-78, 2013-09-30 (Released:2013-10-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

近年,周術期口腔機能管理による全身合併症の予防効果が明らかになり,平成 24 年度から周術期口腔機能管理が保険診療報酬としても評価されるようになった。今回われわれは,周術期口腔機能管理(口腔管理)を行った患者における口腔内の特徴と,歯科的介入が肺炎予防に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,当院で平成 24 年の 1 年間に口腔管理を行った患者 196 名について後方視的に調査した。原疾患への治療法や実施した歯科処置の内容について調査し,依頼の 82% を占めた上部消化管外科,心臓血管外科・循環器内科,耳鼻咽喉科,血液内科の上位 4 科においては,診療科によって口腔内状況や歯科治療に差があるか統計的に分析した。また,上部消化管外科から口腔管理依頼のあった 35 例(口腔管理群)を対象に,口腔管理を行っていない上部消化管外科手術症例(非口腔管理群)129 名と比較して,術後肺炎発症に差があるか検討した。歯科処置に関しては,どの診療科の患者に対しても歯周処置が多く実施されていた一方で,抜歯,義歯への対応は,耳鼻科,心臓血管外科・循環器内科の患者で有意に高かった。上部消化管手術後の肺炎発症率は,非口腔管理群では 7.8%(10/129 例)であったが,口腔管理群では 5.7%(2/35 例)と統計学的に有意に低かった(p=0.04)。 以上の結果より,周術期口腔機能管理の対象者では,何らかの歯科的介入が必要であり,また,依頼元の診療科ごとに口腔内の問題や対応に特徴が現れることが示唆された。さらに,周術期口腔機能管理が全身合併症の予防に効果的であることが改めて示唆された。