著者
金野隆光
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.1, pp.51-68, 1986-03
被引用文献数
12

自然界での生物活性は温度によって時々刻々と変化しているので,生物活性と温度との関係を定量的に把握することが重要である。著者らは,本報でArrheniusの法則を用いて生物活性への温度影響を指標化し,温度変換日数を提案した。温度変換日数とは,或る温度で,或る日数おかれた条件が,標準温度に変換すると,何日に相当するかを表したものである。温度の異なる地域の生物活性を比較するのに25℃変換日数の有効なことがわかった。地温データから算出した年間25℃変換日数は,札幌で88~160日,水戸で167~224日,那覇で約330日であった。この数値と有機物分解特性値とから,地域別の有機物の年間分解率を求めるための計算表を作成した。植物生態気候区分に使用されている温量指数と年間25℃変換日数とは相互に読みかえできることがわかった。これから,植物生態気候区分を年間25℃変換日数で同様に区分できた。25℃変換日数を計算する際に,日平均温度を用いた値は,日較差を考慮した値より低くなるので,温度較差ならびに活性化エネルギーの大きさと両数値の差の大ききとの関係を調べるための計算表を作成した。有機物分解特性値と土壌温度とを用いて,土壌中における有機物分解量を予測する方法を考案した。そして予測法の手順を提案した。この予測法を用いて,盛岡における土壌窒素無機化曲線を作図し,高温年での窒素無機化量は低温年より約2.5kg/10a多いと推定した。また,下水汚泥が5月に施用された場合の窒素無機化曲線を作図した結果,那覇での窒素無機化速度は札幌の2.4倍になることがわかった。
著者
石橋 英二 金野 隆光 木本 英照
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.664-668, 1992-12-05
被引用文献数
10

水田土壌におけるコーティング肥料(LP 140, LP100, LPS 140, U-L)からの窒素溶出パターンについて反応速度論から導かれる温度変換日数法を用いて解析した.その結果,コーティング肥料の溶出は一次反応式で説明でき,五つの特性地(溶出速度,溶出速度の温度依存性,誘導期,誘導期の温度依存性,最大溶出率)を用いて,予測できることを明らかにした.1)反応式:コーティング肥料からの窒素溶出は次の一次反応式にしたがった.[chemical formula] ただし,k : 溶出速度定数(d^<-1>),TAU : 窒素が溶出を開始するまでの期間(誘導期),TAU_1 : 溶出開始までに要する期間のうち温度に無関係な部分,TAU_2 : 溶出開始までの期間のうち温度に依存する部分,A : 最大溶出率.2)溶出速度:溶出速度定数は0.0177〜0.0326(25℃,d^<-1>)で土壌窒素の無機化速度の2〜5倍であった.3)溶出速度の温度依存性:溶出速度に関わる見かけの活性化エネルギーは69,900〜98,000 Jmol^<-1>であり,土壌窒素の無機化と同等の温度反応性を示した.4)誘導期および誘導期の温度依存性:誘導期には温度に依存しない誘導期(TAU_1)と温度に依存する誘導期(TAU_2)があり,LP 140はおのおの10.9日,0.0日であり,LP 100は8.0日,0.0日,LPS 140は12.2日,26.4日,U-Lは0.0日,26.2日であった.また,TAU_2の見かけの活性化エネルギーはLPS 140で114,300 J mol^<-1>,U-Lでは126,800 J mol^<-1>であった.5)最大溶出率:最大溶出率はLP 140,LP100,LPS140では100%で,U-Lは90%であった.