著者
金馬 国晴
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.73-84, 2004-03-31 (Released:2017-04-22)

カリキュラムに生活経験,または生活活動を導入する試みは,それだけで批判されるべきものなのか。本稿では,戦後初期のコア・カリキュラムにおける,生活活動と各教科の知識・技能の関係を明らかにする。この作業を通じて,「はいまわらない」経験主義について明らかにする。当時,コアとは社会科を,とくに<生活活動>を意味した。だが,それはコア・カリキュラムの狭義にすぎず,広義には,再構成されたカリキュラム全体を指した。再構成は,教科ごとに分断された教科課程などへの批判を意図して行われ,代わって<単元>というものが導入された。戦後初期,この<単元>に各教科の知識・技能を関連づけるにあたっては,二つの類型があった。一つは「単元内連続」といえる関係である。その代表は,有名な桜田小学校の樋口澄雄による「郵便ごっこ」であった。ここでは,知識・技能は活動を通じて「連続的」に学ぼれるものと見なされた。対して,業平小学校の吉野正男による「ゆうびん」には,「単元外接合」というべき関係が見られ,注目に値する。活動において必要となったときに知識・技能が「とり立て」て教授されたのである。両者を比較した場合,後者の「単元外接合」のように,各教科の知識・技能を教えるべき機会で教えるカリキュラムが重要な意味をもつ。コア・カリキュラムにはこうした類型も含まれていたのである。