著者
加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.18-23, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

SNS疲れが指摘されている一方で,「インスタ映え」が2017年の流行語大賞に選ばれるなど,ソーシャルメディアには,一定の魅力あるいは虜にさせる仕組みがあるようだ.本稿では人をソーシャルメディアの虜にさせる要因の一つと考えるリツイートや「いいね」機能と承認欲求に着目した.そして,承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性を調べることを本稿の目的とした.質問紙調査を行った結果,承認欲求の高い者はTwitterやInstagramを利用する傾向にあり,承認欲求の低い者はTwitterやInstagramを利用しない傾向が見られた. また,承認欲求の高い者は勉強をする時もそうでないときもネット検索を利用する傾向にあり,承認欲求の低い者は利用しない傾向が見られた.さらに,承認欲求の高い者はスマートフォン等に常時接触している傾向にあり,承認欲求の低い者は常時接触していない傾向が見られた.この結果より,スマホ依存を断ち切る一つの手立てとして,承認欲求をTwitterやInstagram等のソーシャルメディアで満たそうとするのではなく,自己実現や勉学,仕事など,別の方向で満たすことができるよう導くことにより,スマホ依存を克服できる可能性が示唆された.
著者
加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-16, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
13

近年AIに関する技術は飛躍的に進展してきており,社会人を対象にAIに対するイメージの調査なども行われている.本稿は,小学生のAIやロボットに対する意識に焦点を当てて分析を行った.プログラミング経験の有無とプログラミングに対する意識についての分析結果より,「プログラミングは魅力がある」「プログラミングを学びたい」「プログラミングが好き」の3項目については,プログラミング経験がある者の方が,魅力や好感を持ち学ぶ意欲も高いことが示された.ビジュアルプログラミング言語など,小学生にも取り組みやすいプログラミングソフトやアプリが多数開発されてきており,経験をする前には,ハードルが高く感じられるが,経験することにより,魅力や好感・意欲の向上につながることが推察された. AIの発展に対する意識については,プログラミング経験の有無によらず,子ども達は,AIの発展に対し,期待し,興味・関心を持ち,おもしろい,役立つと考えていることがわかった.一方で,少なからず不安も抱いている者もいることが読み取れた.そこで,不安高群と低群に分類し,AIの発展に対する意識との関連を調べたところ,不安もあるけれど期待している,不安もあるけれど興味もある,という積極的な意識としての不安感であった. さらに,AIロボットに期待することと不安に感じることに関する記述傾向として,「楽しさ」「技術発展」「他者との関わり」「(生活や家庭など身の回りのところへの)普及」「必要悪」「支配と恐怖」に,分類された.このことから,負の側面を認識した上で,発展や楽しさなど明るい希望的側面に期待を寄せていることが推察された.
著者
佐藤 奈月 加藤 弘通
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.19-26, 2020 (Released:2021-10-15)
参考文献数
12

本研究の目的は,高校生がインターネット上で新しい知り合いをつくるきっかけについて男女差の観点をまじえて明らかにすることで,先行研究で女性に調査されてきたつながりのきっかけが女性特有のものであるのかを再検討することにあった.そのために,高校6校の1129名を対象とした質問紙調査の自由記述データを分析した.その結果,男女ともに共通の趣味が知り合うきっかけになっていたが,男性はゲームが出会いのきっかけになっており,女性は同じ学校の者と知り合う者がいることが明らかになった.以上を踏まえた実践的示唆として,インターネットが現実の人間関係の補完になっている可能性があるなど,インターネットで他者と出会うことの積極的意義を検討する必要性について議論した.
著者
岡本 安晴
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.70-77, 2018 (Released:2018-12-04)
参考文献数
16

心理学における量的研究法と質的研究法の現在のような区別は消失し,両研究法は情報通信技術(ICT)を活用した研究法に統合されると考えられる.心理学およびその関連領域におけるICT的研究法の歴史を振り返り,未来の心理学におけるその可能性について考える.ICT において創造的な若者を育成するために,Pythonプログラミングを教えることを提案する.
著者
布施 雅彦
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-43, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
6

工業系技術者教育を実施する上で,コンピュータの活用は避けられない.そして,コンピュータへの入力方法も多様化が進んでいるが,キーボードは依然として重要な入力手段の一つである.ICT初期教育のタッチタイピング指導において,学生の環境の変化で指導方法の工夫が,より重要になってきた.学生の取り組みを考えながら,傾向に応じた指導方法について検討した.
著者
橋元 良明
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-14, 2018 (Released:2018-12-04)
参考文献数
17

日本人の若年層の情報行動の大きな変化として,中心がテレビからネットへ移行したことがあげられる.とくに20時以降のテレビ視聴の一部がネット利用に代替された.若年層のネット利用時間の約65%がコミュニケーション系であり,とくにSNSの利用時間が長い.情報行動のもう一つの大きな変化としてデジタル機器利用の低年齢化が指摘できる.我々の調査によれば,0歳児の23.5%がスマートフォンに触れており,その半数がYouTubeを見ている.LINEの利用率も6歳で15%に達している.乳幼児のデジタル機器への接触やSNSの利用の影響については,学会で賛否が分かれている.乳幼児の情報環境の急激な変化は,ここ数年のことでまだ実証的研究データは少ないが,今後,その影響を実証していく必要がある.
著者
西垣 通 加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.37-44, 2018 (Released:2018-12-04)
参考文献数
10

この論文は,人間の自由や尊厳にAI(人工知能)がもたらす影響についてのインタビューである.とりわけ,AIのくだす判断と自律性の関係,AIが心をもつ可能性,AIエージェントとモラル,AI倫理教育,そして今後の高等教育の望ましいありかたなどの諸問題に焦点があてられる.人間の尊厳ある自由を守るためには,AI技術の本質をただしく理解し,あまりに過剰な期待をさけなくてはならない.
著者
寺田 好秀
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.66-69, 2018 (Released:2018-12-04)
参考文献数
8

本稿では,『慶應義塾家計パネル調査』の2015年調査を利用し,インターネットの利用が人々に幸福感を与えているかどうかを,幸福度研究の視点から明らかにする.「幸福度」を被説明変数とした順序プロビット・モデルによる推定の結果,「インターネット利用」の係数が正の値を取り,0.1%水準で有意であった.このことから,インターネットの利用は人々に幸福感を与えており,2015年1月時点の我が国においてはインターネット・パラドックスが生じていないことが明らかになった.
著者
加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-11, 2022 (Released:2022-10-12)
参考文献数
25

新型コロナウイルスによるパンデミックは,社会全体及び教育に対して多大なる影響を与えた.本稿ではインターネット検索やハッシュタグ検索に着目し,インターネット上におけるコロナ禍の大学や遠隔授業に対する人々の言説を分析する.このことによって,新型コロナウイルスによるパンデミック後の大学教育の在り方に示唆を得ることを研究の目的とした.その結果,「遠隔授業」と「オンライン授業」のワードについては,新型コロナ感染症流行後の検索割合が高かった.一方,「大学生」「学生」や「面接授業」」のワードについては,変化は見られなかった.また,「#遠隔授業」と「#オンライン授業」のハッシュタグをつけたツイートデータの分析からは,学生らの発信よりも,保護者の発信と思われるツイートが多数見られた.「#大学生の日常も大事だ」と「#大学生の日常も大切だ」のハッシュタグをつけたツイートデータの分析からは,予想に反して中庸の感情を持ったツイートの多いことが分かった.このことから,新型コロナウイルスによるパンデミック後の大学教育の在り方として,一部の過激な発言に惑わされることなく,適時適正な判断と方向性が望ましいであろうことが示唆された.
著者
大野 志郎
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.10-17, 2019 (Released:2020-07-25)
参考文献数
29

SNS利用者の増加および低年齢化が進む中,情報モラル教育の観点から,SNS利用による問題の発生を抑制するための知見が求められる. 本研究ではSNSの利用動機と 様々な問題との関連の強さを明らかにするため,オンラインアンケート調査を実施した. 事前調査により,15歳から39歳までのインターネット長時間利用者(n=2,994)を抽出し,そのうちSNSを最もよく利用する709サンプルを用いた. SNS利用動機の因子分析の結果,「逃避」「優越感・評価の獲得」「日常の関係維持」「愚痴・相談」「共感の獲得」の5因子が見いだされた. 続いて,諸問題を目的変数,SNS利用動機を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った. SNS依存傾向に対する調整オッズ比は,逃避が2.92,優越感・評価の獲得が2.30,共感の獲得が2.32であり,有意であった.また,優越感・評価の獲得の動機は,身体的・精神的健康の問題(調整オッズ比4.73,3.52)との関連が顕著であり,大切な人間関係への悪影響,多額のムダ使いとも強く関連していた.
著者
齋藤 祐 禰覇 陽子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.8-17, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
10

2018年度,中央大学附属高等学校がSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定となったことを受け,課題研究のひとつとしてコンピテンシー・ベースの観点別評価体制の開発を行うこととなった.本稿は,上記課題研究に基づいて行われたアンケート調査の経緯と,分析の全容についてまとめたものである.アンケート結果を分析したところ,高校生が抱える資質・能力面での課題項目を抽出することができた.
著者
大野 志郎
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.10-17, 2019

SNS利用者の増加および低年齢化が進む中,情報モラル教育の観点から,SNS利用による問題の発生を抑制するための知見が求められる. 本研究ではSNSの利用動機と 様々な問題との関連の強さを明らかにするため,オンラインアンケート調査を実施した. 事前調査により,15歳から39歳までのインターネット長時間利用者(n=2,994)を抽出し,そのうちSNSを最もよく利用する709サンプルを用いた. SNS利用動機の因子分析の結果,「逃避」「優越感・評価の獲得」「日常の関係維持」「愚痴・相談」「共感の獲得」の5因子が見いだされた. 続いて,諸問題を目的変数,SNS利用動機を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った. SNS依存傾向に対する調整オッズ比は,逃避が2.92,優越感・評価の獲得が2.30,共感の獲得が2.32であり,有意であった.また,優越感・評価の獲得の動機は,身体的・精神的健康の問題(調整オッズ比4.73,3.52)との関連が顕著であり,大切な人間関係への悪影響,多額のムダ使いとも強く関連していた.
著者
井本 美子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.47-52, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
4

特許情報は,最新の科学技術知識を得るたいへん便利なツールである.しかし,現状は,特許サーチャーや特許明細書作成者以外の人々はあまり特許情報に触れようとしない.実は,特許情報は一般の人でも理解できる部分が多々ある.また,特許情報の一部である中間処理は,特許公報よりもさらにわかりやすく書かれている.本論文では,中間処理を一つの文献として見立て,特許情報を高等教育に取り入れる方法を説明し,実際に取り入れた職業教育の事例について解説する.
著者
松本 慎平 加島 智子 山岸 秀一
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-40, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
34

プログラミング教育に関するいくつかの論文では,プログラミング学習後の理解度はプログラミング学習以前の何らかの適性によって決定付けられると述べている.そこで本論文では,プログラミングの適性をその学習以前に行われるプログラミングゲームの理解度で定義し,それとプログラミング学習後の理解度との関係を調査することを目的とする.すなわち,プログラミング学習前に動機付けの目的で利用されたプログラミングゲームの理解度の状況を個々のみならず全体の傾向も含め事前状態として把握するばかりでなく,事前状態と事後状態であるプログラミング学習後の成績とを対応付けて分析することを課題とする.本論文では,事前状態を把握するためのプログラミングゲームとしてアルゴリズム思考の体験を目的とした「アルゴロジック」を利用した.アルゴロジックは,プレイヤが予め設定した命令ブロックでロボットを自動的に動作させ間接的に問題解決を行わせるプログラミング未経験者向けのパズルゲームである.本論文では,学習者がプログラミングの学習を始める前にアルゴロジックを用いた演習を行い,演習後その理解度を確かめるためのアルゴロジックテストを実施した.学習者は,アルゴロジックテストの後,プログラミングの基本を約10か月間かけて学習し,プログラミング学習の理解度を都度テストで確認した.本論文では,これらテストの結果をアルゴロジックテストの得点と関連付けて分析した.分析の結果,アルゴロジックテストの結果とプログラミングの理解度との間には正の関係が示唆された.
著者
一森 湧 加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.59-61, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
3

本調査では,大学生・高専生480名に対して,フェイクニュースに対する認識を調査し,専門家の意見と比較した.結果,メディアリテラシー教育を通して,情報を受けとる自分自身が情報の事実確認をする姿勢が必要であるという点で専門家と大学生の意見が一致した.また,半数程度の学生は,SNSの運営者がフェイクニュースを管理するべきという考えを持っているのに対し,専門家はフェイクニュースの削除基準などを明確しなければ情報統制につながると述べている.そのため,中学校の公民の授業でフェイクニュースについて取り扱い,フェイクニュースを発信・拡散しない姿勢を形成するべきだと結論付けた.
著者
加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育
巻号頁・発行日
vol.1, pp.18-23, 2019

SNS疲れが指摘されている一方で,「インスタ映え」が2017年の流行語大賞に選ばれるなど,ソーシャルメディアには,一定の魅力あるいは虜にさせる仕組みがあるようだ.本稿では人をソーシャルメディアの虜にさせる要因の一つと考えるリツイートや「いいね」機能と承認欲求に着目した.そして,承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性を調べることを本稿の目的とした.質問紙調査を行った結果,承認欲求の高い者はTwitterやInstagramを利用する傾向にあり,承認欲求の低い者はTwitterやInstagramを利用しない傾向が見られた. また,承認欲求の高い者は勉強をする時もそうでないときもネット検索を利用する傾向にあり,承認欲求の低い者は利用しない傾向が見られた.さらに,承認欲求の高い者はスマートフォン等に常時接触している傾向にあり,承認欲求の低い者は常時接触していない傾向が見られた.この結果より,スマホ依存を断ち切る一つの手立てとして,承認欲求をTwitterやInstagram等のソーシャルメディアで満たそうとするのではなく,自己実現や勉学,仕事など,別の方向で満たすことができるよう導くことにより,スマホ依存を克服できる可能性が示唆された.
著者
鈴木 寛 加納 寛子
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育ジャーナル (ISSN:24326321)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.31-36, 2018 (Released:2018-12-04)

この論文では,AI時代に必要な人材の条件について議論した.経済の側面では,高付加価値のサービスへの需要と供給が始まることが示唆された.人材育成の側面では,多様な人々と主体的に協働していく力の重要性が指摘された.