- 著者
-
鈴木 和樹
- 出版者
- 電気通信大学
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-25
本研究では,少林寺拳法における逆突きを題材として,学習支援に用いることを想定した熟練度評価モデルの構築を目指した. まず,計測実験で得られた参加者のデータに対して,事前に熟練者7 名に対して行った調査アンケートで,少林寺拳法において重要とされる指標について調べた.その結果,複数の熟練者が指摘する注目すべき重要な指標を選別した.その後,未経験者群と経験者群,熟練者群の3 つのグループの被験者を対象に,加速度センサーを体に装着させモーションキャプチャも併用して逆突きの計測実験を行った.事前調査の指標に着目して分析を行った結果,全ての指標において未経験者群と経験者群・熟練者群の間で有意な差を確認した.また,一部の指標においては,経験者群と熟練者群の間でも有意な差を確認した.この結果から,経験者が熟練者になるうえで注意を払うべき指標を推定した. 次に,実験によって未経験者群と経験者群・熟練者群の間で有意な差がみられた指標を用いて熟練度評価モデルを提案した.提案した評価モデルは,正規分布の性質を利用して経験者群の平均値を用いて経験者の平均値に近いほど高い点数を,遠いほど低い点数を算出するようにした.この熟練度評価モデルによって正しく参加者の熟練度を評価できるかを検証するために,6 名の熟練度の異なる参加者について熟練者の主観評価との比較実験を行った.結果として,構築した評価モデルは参加者の熟練度が上がるにつれて高い点数を付けることを確認した.また,熟練者の主観評価との平均二乗誤差平方根(RMSE)を算出した結果,熟練者3 人中2 人の評価との誤差が0.9 であり,最も大きな誤差でも2.1 であった.スピアマンの順位相関係数も,各熟練者との間で0.7 以上の強い相関が見られた.このことから,提案の評価モデルが熟練者の主観評価に近い評価を行える可能性を確認し,本研究で用いた熟練度評価モデルの提案手法の有効性が示唆された.