著者
鈴木 大三
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2年目の平成29年度では,「新たな類似フレーム間予測」や「新たな差分信号適応変換」を実用化するための低演算かつ高効率な基盤技術となり得る手法を実現し,当該分野のトップジャーナルであるIEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technologyに投稿,採択された.具体的には主に以下の2点である.(1)低演算かつ高効率な多次元変換の実現類似フレーム間予測や差分信号適応変換を行うために,高性能な信号解析は不可欠である.しかしそういった多次元信号解析を高性能に行う変換は演算量が増える傾向があり,あまり現実的であるとは言えない.そこで音響符号化標準規格MP3などに用いられる修正離散コサイン変換(MDCT)に注目し,そのMDCTおよびそれに関係する修正サイン変換(MDST)とを2次元信号へ応用する際の関係性を用い,また信号端での処理を周囲画素の平均値を用いることで存在しない方向成分を抑制し,その最小タイリング処理を考慮することにより,低演算かつ高効率に処理を行える多次元変換を実現した.(2)低演算かつ高効率な2次元リフティング構造の実現回転行列の組み合わせによる2次元変換をより低演算かつ高効率で処理できるリフティング構造を新たに提案した.画像符号化標準規格JPEG XRに使用されている重複変換の実現にも応用可能であり,実際にJPEG XRに組み込み,その有用性(低演算かつ高効率で互換性も備えている)を示した.映像符号化においては高速かつ高性能な処理手法が重要であり,この構造も基盤技術として応用が期待される.