著者
鈴木 希理恵
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.111-113, 2011-09-30 (Released:2018-07-26)
参考文献数
8

外国産野生動物ペットを一般家庭で飼育する場合,捕獲による絶滅,外来生物,感染症と体内細菌群,適正な飼養,密輸と違法販売の5つの問題がある。捕獲による絶滅の背景として大規模な自然の開発があり,その副産物として野生動物ペットが大量に輸出されている。しかしこのような生息地の現状は知られていない。密輸と違法販売で規制強化と普及啓発に効果があった事例としてスローロリスがあげられる。スローロリスは日本では2000年以降許可された輸入はないが,販売されていた。2007年9月からワシントン条約で国際取引が原則禁止され,2008年1月にスローロリスの密輸販売者が逮捕される事件が報道されると,購入が控えられるようになり,2008年,2009年と密輸はなくなった。JWCSはスローロリス研究者を招き,密輸・違法販売の取締まりのための識別と押収後の対応についてのワークショップを関係者に対して行った(2009年2月)。外国産野生動物ペット問題の解決策として規制と普及啓発は効果があると思われる。そのためには獣医師・研究者による研究が必要であり,それを基盤としてNGOは規制強化の政策提言や一般への教育普及を担うことができる。