著者
立平 良三 瀬古 弘 鈴木 智広
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.633-642, 1998-08-31
参考文献数
9
被引用文献数
2

単一ドップラーレーダーのデータから風の場を推定するには, 解析領域内で風が一様とか線形といった仮定が必要である.台風に適した仮定としてはまず軸対称風系が考えられる.この場合は, 台風中心の周りの同心円上で風の流入角が一定となる.本論文ではさらに現実に近付けて「解析領域内で流入角はある曲線にそって一定」と仮定し, 同心円上では流入角が変化しうるようにした.この曲線は円弧で近似できるものとし, その曲率を求める手法をモデル風系を用いたシミュレーションによって導いた.モデル風系としてはランキン渦(最大風速50ms^-1)を基本とし, 流入角が台風中心の周りを波数3で最大±30°正弦関数的に変化するものを用いた.中心から65km離れたドップラーレーダーでモデル風系を観測した時の動径速度分布にこの手法を適用し, 風を推定したときの誤差ベクトルの大きさは, 絶対値の平均で約8ms^-1であった.一様風を仮定した場合の誤差は約41ms^-1であったから, 大幅な改善が達成されている.