著者
鈴村 彰太 大沢 愛子 植田 郁恵 森 志乃 近藤 和泉 前島 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10430, (Released:2016-09-15)
参考文献数
20

失行は日常生活活動(activities of daily living: ADL)に大きな影響を及ぼすが,症候が複雑で行為の誤り方に個別性・多様性が存在するためリハビリテーション手法の確立は困難で,その障害や治療に関する詳細な検討もほとんどない.我々は左頭頂側頭葉のアテローム血栓性脳梗塞で,ごく軽度の右片麻痺と感覚障害に加え,観念失行・観念運動失行・肢節運動失行を呈した82 歳女性を経験した.特に食事動作に関し,右手では困難な動作をまず左手で実施し,その後道具を右手に持ち替える方法を取り入れ,誤りなし学習を徹底したところ,動作の自立を果たした.本症例の改善機序として,左上肢の使用により右上肢の体性感覚が補われたことで,誤りの認知や道具使用に関する意味概念への到達が可能となり,正しい運動プログラムの惹起が促進されて,右手の運動学習につながったものと推察された.