著者
早川 清 鍋島 康之 太井子 宏和 庄司 正弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

表層軟弱地盤における振動伝播挙動の正確な把握および振動増幅現象の予測手法についての検討と検証解析課題に関して、平面道路・高架道路などにおける振動実側調査および数値解析を行った。長野県内の地盤が軟弱な幹線平面道路での振動調査およびボーリング調査・貫入抵抗調査などの詳細な地盤調査結果より、表層軟弱地盤の固有振動数が5Hz付近にあり、家屋の固有振動数と一致して共振現象を生じていることを解明した。ISO規準に基づいた路面凹凸条件を入力し、数値シュミレーションでもこの現象を解析している。大阪府内幹線高架道路の構造体の固有振動数は5Hz付近にあり、沿道家屋との共振現象を励起して苦情に繋がっていた。橋体本体の床版たわみを制御する縦増桁による対策効果を固有値解析から検討したが、低域振動数では顕著な効果の期待できないことが理解された。高架道路交通振動を対象とした地盤振動の伝播特性に関しては、上下方向だけではなく、橋軸方向および橋軸直角方向の3方向加振の影響も大きく、現行振動予測法の不備を指摘した。京都南部の幹線平面道路は、表層が軟弱な沖積粘土層で構成されている。道路交通振動調査および表面波探査から、地盤の固有振動数が3Hz付近の低域にあることを確認した。地中防振壁を用いる振動低減対策工に関する研究課題に関しては、大きな中空部を有するPC壁体および矢板の振動低減効果を、現地振動実験。模型振動実験およひ数値シュミレーション解析から考察した。高架道路でのPC壁体の振動低減効果量は5dB程度であり、2次元FEM手法で橋体の動的応答を再現できることを確認した。PC壁体周辺部の剛性を3種類に変化させた模型壁体を作成し、中規模振動実験から壁体重量の影響を検討した。この結果、軽量壁体の効果が大きく生じたが、さらに数値解析からもこの点を解明する必要性を感じている。剛矢板地中壁の振動遮断効果は、既に現地振動実験結果から確認している。しかしながら、矢板が2次的な振動源となって矢板の背後で振動増幅される問題点を改善するために、矢板の打設深度、打設枚数およひ軌道下地盤改良などの対策効果を、数値解析から検討している。