著者
植村 善博 太井子 宏和
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.722-740, 1990-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
40
被引用文献数
11

琵琶湖はわが国最大で,世界的にも最古の湖沼の1つであるが,その湖底部の活構造についてはほとんど明らかにされていない.そこで,湖沼図・ユニブーム記録・エアーガン記録の判読,深層ボーリングの成果などに基づき,湖底活断層の分布と性質,琵琶湖の傾動運動および現湖盆の変遷過程について考察した. その結果,湖盆形態を決定する大規模な活断層として,西岸・南岸・東岸湖底断層系が認定された.西岸湖底断層系はA級活動度をもつ最も重要な逆断層であり,変動地形や西傾斜の基盤面の特徴などから,琵琶湖を含む近江盆地のブロックが比良・丹波のブロックにアンダースラストしている境界であると推定した.南岸・東岸湖底断層系はB級活動度をもつ逆断層である..以上の活断層はその走向と変位様式から,東西水平圧縮下での共役断層系をなしていることが明らかになった.またこれらに限られた中・北湖盆は逆断層性の地溝(ramp vally)である。中央撓曲と掘削点断層は50万年前頃を境に変位速度が加速化しており,近畿中部全域において生じた地殻応力の増加が原因と考えられる.琵琶湖の湖底地形や堆積作用を支配している近江傾動運動は,約100万年前に発生し,40万年前以降加速化してきている.現琵琶湖盆の発達過程は,(1)湖盆の発生期(200万年前頃),(2)浅い湖盆の発達期(200万年~40万年前),(3)深い湖盆の形成期(40万年前~現在)の3時期に分けられ,その古地理図が描かれた.
著者
早川 清 鍋島 康之 太井子 宏和 庄司 正弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

表層軟弱地盤における振動伝播挙動の正確な把握および振動増幅現象の予測手法についての検討と検証解析課題に関して、平面道路・高架道路などにおける振動実側調査および数値解析を行った。長野県内の地盤が軟弱な幹線平面道路での振動調査およびボーリング調査・貫入抵抗調査などの詳細な地盤調査結果より、表層軟弱地盤の固有振動数が5Hz付近にあり、家屋の固有振動数と一致して共振現象を生じていることを解明した。ISO規準に基づいた路面凹凸条件を入力し、数値シュミレーションでもこの現象を解析している。大阪府内幹線高架道路の構造体の固有振動数は5Hz付近にあり、沿道家屋との共振現象を励起して苦情に繋がっていた。橋体本体の床版たわみを制御する縦増桁による対策効果を固有値解析から検討したが、低域振動数では顕著な効果の期待できないことが理解された。高架道路交通振動を対象とした地盤振動の伝播特性に関しては、上下方向だけではなく、橋軸方向および橋軸直角方向の3方向加振の影響も大きく、現行振動予測法の不備を指摘した。京都南部の幹線平面道路は、表層が軟弱な沖積粘土層で構成されている。道路交通振動調査および表面波探査から、地盤の固有振動数が3Hz付近の低域にあることを確認した。地中防振壁を用いる振動低減対策工に関する研究課題に関しては、大きな中空部を有するPC壁体および矢板の振動低減効果を、現地振動実験。模型振動実験およひ数値シュミレーション解析から考察した。高架道路でのPC壁体の振動低減効果量は5dB程度であり、2次元FEM手法で橋体の動的応答を再現できることを確認した。PC壁体周辺部の剛性を3種類に変化させた模型壁体を作成し、中規模振動実験から壁体重量の影響を検討した。この結果、軽量壁体の効果が大きく生じたが、さらに数値解析からもこの点を解明する必要性を感じている。剛矢板地中壁の振動遮断効果は、既に現地振動実験結果から確認している。しかしながら、矢板が2次的な振動源となって矢板の背後で振動増幅される問題点を改善するために、矢板の打設深度、打設枚数およひ軌道下地盤改良などの対策効果を、数値解析から検討している。