- 著者
-
長屋 俊
- 出版者
- 一般社団法人 情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.11, pp.535, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)
私たちは生活や仕事の数多くのシーンで必要な情報をさがし,得て次の行動を考え選択し人生を歩んでいます。日々の天気予報や家事のノウハウを知りたいとき,趣味や新しくものごとを学ぶとき,進学先や就職先あるいは転職先に悩むとき,体調不良時や病気を告げられたとき,などなど。情報をさがすことができるかどうかについては「その情報がそもそもこの世界に存在しているかどうか」という問題もありますが,「その情報が既に存在しアクセス可能な状態なのにさがすことができていない(=Findability)」という問題もあります。本特集では後者の問題を取り上げます。また,情報に出会った後に「私はこんな情報が欲しかったんだ」と思う(=Serendipity)ような潜在的なニーズにも焦点を当てました。三輪眞木子氏に,総論として利用者の情報行動という観点から情報検索者の多様な情報探索プロセスについて執筆いただきました。情報探索者の知識構造を変化させるシステム環境に求められること,情報をさがしやすくするためにインフォプロに求められるスキルもまとめていただきました。「情報」=「ウェブ上の情報資源」という観点で,飯野勝則氏には,佛教大学において図書館ウェブサービスを検索システムとしてどのようにデザインし利用者の利便性を高めてきたかについて執筆いただきました。検索用メタデータも意識し各種情報資源が最大限利用されるようにデザインしている実践例を具体的に解説いただきました。川添歩氏,篠原稔和氏には,情報探索におけるユーザビリティという視点で,情報探索のしやすいデザインについてデザインパターンとして詳細に執筆いただきました。具体例として国立国会図書館サーチを事例に挙げつつ各デザインパターンを解説いただきました。「情報」=「本」という観点で,赤木かん子氏には,どのように本を分類し書架を作ることで子どもたちが本と出合えるようになるかノウハウをまとめていただきました。長年続けてきた学校・公共図書館改装の過程で子どもたちと対話をすることで培ってきた手法や考案したツールを解説いただきました。杉浦徳利氏には,実空間での「思いがけない図書との出会い」を誘発する書架設計を目的とした書架でのブラウジング実験について執筆いただきました。機能論理プログラミングを利用した潜在的な行動パターンを発見する新たな試みについても執筆いただきました。本特集が読者諸賢にとって日々の活動における一助となれば幸いです。(会誌編集担当委員:長屋俊(主査),當舎夕希子,久松薫子,南山泰之)