著者
李 登輝 王 燕軍 中村 佐都志 長嶺 慶隆
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.7-11, 2018-02-25 (Released:2018-03-23)
参考文献数
12

台湾牛(TWN)は台湾の日本統治時代(1895年~1945年)に日本から台湾へ輸送された和牛の子孫だといわれるが,現在は陽明山で放牧される19頭(雄牛8頭,雌牛11頭)のみとなった.本研究ではこの19頭のTWNと黒毛和種(JB)さらにヘレフォード(HER),シンメンタール(SIM),ショートホーン(SH),アンガス(ANG),ホルスタイン(HOL),シャロレー(CHA),リムジン(LIM)の7種の欧米品種を加えた9品種間の遺伝的な関係をSNP(Single Nucleotide Polymorphism,一塩基多型,スニップ)マーカーを用いて調べた.クラスター分析(ウォード法,群平均法),主成分分析,近接結合法を用いて解析した結果,台湾牛TWNは黒毛和種JBや外国種からは独立した集団として位置していた.
著者
林 孝 長嶺 慶隆 西田 朗
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.439-446, 1985
被引用文献数
5

放牧牛群の社会関係を調査するために,斜め空中写真法による行動の記録と解析を試みた.放牧地の近くに立つ塔の上から放牧牛の行動を確察しながら,市販の35mm一眼レフカメラを斜め下方向に向けて,3分間隔で連続撮影した.地上座標が既知の牧柵などと共に放牧牛の写真をとれば,放牧牛などの地上座標を写真上の座標から推定することができる.この斜め空中写真法により20頭および8頭からなる2群の各個体の3分間ごとの位置を求め,これを用いて個体間距離および移動距離を計算した.放牧牛の位置する頻度は牧区の角と水飲み場が高い傾向にあった.育成牛と成雌牛を混合した群では,育成牛と成雌牛間の個体間距離は育成牛間および成雌牛間のそれよりも有意に大きいことが多く,これらは牧区内に無作為に2点を配置してシミュレートした値と区別することは困難であった.つまり育成牛と成雌牛は互いに他と関連せずに行動していたといえる.群内で特定の2個体が他よりも有意に小さな個体間距離をもつならば,この2個体は互に親密であると考えられ,この親密な関係を図示することによって牛群内の社会構造を単純化して表現することができる.個体間距離の比較によって,育成牛群内に網目構造あるいは直線構造の内部構造をもつサブグループが見出され,さらに成雌群内には直線構造のサブグループが見出された。しかし他のどの個体とも親密な関係をもたないはなれ牛も少頭数認められた