著者
長柄 一誠
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.204-211, 2003 (Released:2003-11-05)
参考文献数
40

Compressed solid hydrogens are introduced with the basic property of the hydrogen molecule. Starting from a brief introduction of old calculations, first-principles calculations of compressed hydrogens and their results are reviewed with some of our results of calculations based on the local density approximation (LDA). The probable structures over 150 GPa and the effects of the zero-point motion of the nuclei on those structures are discussed. The structures are also examined from the view point of electronic band structure. The problems remaining for the future studies of compressed hydrogens are summarized.
著者
長柄 一誠
出版者
鳥取大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

構造予測においては成功例が多い第一原理シミュレーションであるが、通常行われる交換相関相互作用に対する局所密度近似(LDA,GGA)のもつ欠点故に、バンドギャップが正しく評価出来ず、金属-非金属転移の評価には使えない。そこで、最近有用性が明らかになって来た準粒子モデルに基づく第一原理計算(GW近似計算)を用いて、バンドギャップの圧力変化のより信頼性の高い評価を行い、圧力誘起金属転移が報告あるいは予想されている水素化合物と水を調べ、より信頼出来る金属転移圧評価を目指した。結果はこれらの物質の圧力誘起金属化実験に対して、指針となるデータとして役立つ。 2011年に、希土類水素化物 YHx、特に YH3について、圧力誘起金属転移の新しい実験が大阪大等で行われ、また内外で理論的な予測構造も報告された。この物質のGW近似に基づく計算結果は、予測されている20数万気圧での金属化という結果よりずっと高い転移圧になるという、大阪大の結果を支持するものであった。(50th EHPRG会議 Thessaloniki, GREECEで発表)。これに続いてより複雑な構造に対するGW計算を実行するため、連携研究者である鳥取大学の小谷岳生氏にGWコード(Ecaljコード)の並列化を進めて頂き、高速計算が可能になった。それを用いて、ヨウ素の圧力誘起金属転移を調べると、通常のLDA,GGAの12万気圧程度でバンドギャップが閉じ金属化するという結果を修正し、実験値に近い約20万気圧でバンドギャップが閉じるという結果を得た。他のコードとの比較を行い、信頼性のチェックが終われば結果を公表する。コード改良の結果かなりの高速計算が可能になり、今まで以上に複雑な構造が扱えるようになって来たため、水をはじめ多くの構造が提唱されながら、金属転移圧が依然としてはっきりしない金属水素の金属転移圧予測を今後めざす。