著者
江木 鶴子 前田 直樹 長田 一興
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1742-1753, 1996-10-25
被引用文献数
1

本論文は,学生プログラマのプログラム生成過程の認知科学的な分析に基づいて構築されたプログラム生成過程モデルを提案する.学生プログラマは,保持しているプログラミングプランを与えられた課題を実現するためだけでなく,プログラム生成を合理的に進める目的にも用いる.本論文では,前者の目的を課題ゴール,後者を戦術ゴールと称する.本モデルは,基本的にはPROUST[12]のゴール/プランモデルを踏襲したゴール主導のモデルであるが, PROUSTでは課題ゴールだけを前提にしているのに対して,本モデルではこれら2種類のゴールの使用を考慮している点が異なる.これにより学生プログラマのプログラム生成過程時の思考錯誤的な振舞いをより正確に表現することができる.本論文では,学生プログラマが用いた戦術をプログラム生成計画,仮プラン策,後回し策,ゴール変更策,調査確認策,奇襲策,安全無策,復帰策に分類し分析した.その結果として戦術プランを使用する意図が,(1)プログラム生成過程で使用したプランを確認し定着させる,それにより(2)プログラム生成過程を促進させる,更に(3)プログラム生成過程を後退させない,などであることを述べる.