- 著者
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長田 美沙季
植田 拓也
柴 喜崇
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2015, 2016
【はじめに,目的】高齢者が運動をすることの意義は数多く報告されているが,いかにして長期にわたり運動継続するかが問題となっている。地域在住高齢者が運動を継続するための要因としてグループでの運動が必要であるとの報告がある(吉田,2006)。一方,体操グループへ自主的に参加している地域在住高齢者における参加継続に関連する要因について縦断的に検討している研究はない。そこで本研究では自主参加型体操グループ(以下,体操会)に参加している地域在住高齢者における,5年間の体操会への参加継続に関連する要因を縦断的に検討することとした。【方法】対象は神奈川県内のR公園でのラジオ体操会会員から募集し,2010年のベースライン調査に参加した地域在住高齢者の内,調査不参加者に対する電話調査を得られなかった13名を除外した84名(男性43名:平均年齢73.2±6.3歳,女性41名:平均年齢70.1±5.2歳)とした。参加者には体力測定および質問紙調査を実施した。調査項目は,基本的属性,握力,開眼片脚立位時間,立位体前屈,Timed Up and Go Test(TUG),5m最速および快適歩行時間,膝伸展筋力,老研式活動能力指標,WHO5精神的健康度評価表(WHO-5),Falls Efficacy Scale International(FESI)である。調査への不参加者には電話調査を実施し,体操会への参加の有無を調査した。また,参加中止者には中止の理由も聴取した。統計解析は,体操会への参加継続の有無を従属変数(継続=1/中止=0)とし,変数減少法による多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】2010年の調査参加者の内,5年後の体操会への参加継続者は53名(63.1%;平均年齢71.8±5.1歳),参加中止者は31名(36.9%;平均年齢71.7±7.4歳)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,5年後の体操会への参加継続に関連する要因として,ベースライン時のFESI(オッズ比:0.953,95%信頼区間:0.978-0.990,p=0.012,平均点±標準偏差;継続群:25.7±10.3点,中止群:33.3±14.9点)が抽出された。体操会への参加中止の理由は疼痛の出現1名(3.2%),疾病の罹患・増悪6名(19.4%),家族の怪我・介護2名(6.5%),死亡2名(6.5%),人間関係2名(6.5%),身内の不幸1名(3.2%),朝起きるのが辛い5名(16.1%),他の運動を始めた1名(3.2%),時間を自由に使いたい2名(6.5%),歳だから1名(3.2%),不明8名(25.8%)であった。【結論】本研究では5年後の体操会への参加継続を低減させる要因として,ベースライン時の転倒自己効力感が関連しており,ベースライン時の転倒自己効力感が低いほど5年後の体操会継続が難しいことが明らかとなった。また,体操会への参加中止理由から,自主参加型体操グループに参加している高齢者においては,疾患への罹患・増悪などの身体的な要因だけでなく,人間関係,家族の介護など,環境及び社会的な要因も参加継続に関係していると推察された。