著者
長畑 守雄 近藤 礼 毛利 渉 佐藤 慎治 山木 哲 長畑 仁子 齋藤 伸二郎 嘉山 孝正
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.156-161, 2013

【目的】機械的血栓回収療法(mechanical thrombectomy;MT)導入前後で,当院における急性期脳梗塞に対する治療動向と治療成績の変化を検討する.【方法】MT導入前(pre-MT期)10ヵ月とMT導入後(post-MT期)19ヵ月で,発症から6時間以内の急性期脳梗塞患者数,期間中の全脳梗塞患者に占める割合,施行された再灌流療法毎の重症度(National Institute of Health Stroke Scale;NIHSS)と転帰(modified Rankin Scale;mRS)を検討した.【結果】急性期脳梗塞症例数はpre-MT期が97(全脳梗塞症例の44.3%),post-MT期が250(同52.2%).これらに対するt-PA静注療法(intra-venous tissue-plasminogen activator;IV-tPA)の施行率はpre-MT期が12.4%,post-MT期が25.2%であった.Pre-MT期における局所線溶療法の施行率は5.2%,post-MT期におけるMTの施行率は11.6%であった.IV-tPAによる30日後mRS 0-2はpre-MT期で50.0%,post-MT期では48.0%であった.MTによる90日後mRS 0-2は37.9%であった【結論】Post-MT期にIV-tPAの施行率が上昇したのは,早期受診の重要性を訴えてきた当院の社会的啓発活動の効果で,より早期の来院例が増えた影響が大きいと思われた.当院においてMTは急性期脳梗塞患者の11.6%に対して施行され,4.4%で90日後mRS 0-2の転帰が得られた.