著者
筒井 敏彦 長谷 正義 TANAKA Akihiro 藤村 奈苗 堀 達也 河上 栄一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.603-606, 2000-06-25
被引用文献数
8 34

アクロソームの保護, 融解後の精子活力の持続が明らかな希釈液にOrvus ES Paste(OEP)を添加した.犬凍結精液を用いて人工授精を行った.凍結精液は, 卵黄トリス・フルクトース・クエン酸液を用いて, グリセリンおよびOEPの最終濃度は, それぞれ7%, 0.75%で作製した.人工授精は, 末梢血中progesterone値から推定した交配適期に行った.子宮内授精は, 開腹手術によって片側子宮角内に精子数1億を注入して行った.また, OEP無添加の精液については, 精子数3億を授精した.腟内授精は, 精子数10〜40億について行った.その結果, 子宮内授精を行った10頭中9頭(90.0%)が受胎した.産子数は, 1〜7匹で, 平均3.6±0.9匹であった.精子注入側の排卵数に対する子犬数の割合は, 平均71.8%であった.注入側の排卵数を子犬数が上回った例はみられなかった.OEP無添加では, 4頭とも不妊であった.腟内授精の結果は, 10億と40億を授精した計6頭は不妊, 20億では3頭中2頭が受胎した.以上のように, OEPを添加した犬凍結精液の子宮内授精で高率に受胎することが明らかとなった.今後は, 手術によらない子宮内授精法の開発および腟内授精に使用可能な犬精子の凍結法の開発が必要と思われる.
著者
長谷 正義 堀 達也 河上 栄一 筒井 敏彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.243-248, S・Vii, 2000-03-25
被引用文献数
8

最近, 犬の凍結精液への関心が高まり, これに伴って, 排卵時期および授精適期の判定法が重要となった.犬の排卵時期を推定する方法として, vaginal smear, 血中性ホルモン, 超音波画像診断装置(US)などを組み合わせて検討されているが, まだその技術は確立されていない.そこで業者らは, US, 血中LHおよびprogesterone(P)値を1日3回観察することによって, 排卵時期を推定する方法を検討した.その結果, USによって卵胞の形状が崩れることによって排卵が観察できたのは, 11頭中6頭(54.5%)であった.これらのLHピークから排卵までの時間は, 24〜48時間, 平均38.0時間であった.排卵日のP値は, 1.88〜2.81ng / ml, 平均2.34ng / mlで, 1頭が1.88ng / mlであったが, 他の5頭は2ng / ml以上を示した.排卵前日のP値は, 0.85〜1.56ng / ml, 平均1.12ng / ml, であった.実験犬11頭における, LHピーク後2日を排卵日とした場合のP値は, 2.12〜4.06ng / ml, 平均2.78ng / mlであった.また, LHが10ng / ml以上の高値を維持した期間は, LHピーク前後の12時間であった.以上のことから, USおよびLHによって排卵を推定するには, 1日数回の検査が必要であった.しかし, 末梢血中P値は1日1回の検査で, 2ng / ml以上を示した日が排卵日に当たることが明らかとなった.